記事のポイント
- 政府は11月11日、12日、「秋の行政事業レビュー」を行った
- 無駄のない行政、事業の透明性を高める取り組みだ
- 河野行革相は、「雇用調整助成金」などの給付はデジタル化が重要と強調した
河野太郎行政改革担当相は、「助成金などの給付はデジタル化が重要。デジタル時代にアナログ的現状は改善すべき」と強調した。政府が開いた「秋の行政事業レビュー」における「持続化給付金」事業に参加した中での発言だ。電子申請しなかった案件に多額の経費がかかったとの評価者意見に応えた。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)
政府は毎年秋、「秋の行政事業レビュー公開検証」を実施している。事業の透明性を高めることが狙いだ。EBPM(エビデンス:根拠に基づく政策立案)の手法などを用い、各省と有識者が国の事業について議論する。
令和5年「秋の行政事業レビュー公開検証」は、内閣官房行政改革推進本部のもと、11月11日と12日に開いた。課題や改善点は、各府省が次年度の予算の概算要求や執行に反映する。
「持続化給付金(コロナ関連):経済産業省」「雇用調整助成金(コロナ関連):厚生労働省」「(コロナ関連)中小企業等事業再構築促進基金:経産省」「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金:環境省」など、10のテーマが議論された。
「持続化給付金」は新型コロナで苦しむ事業者の事業継続を支えるための制度だ。売上高が前年同月比で50%以上減少した事業者に対して、使途に制限を設けない現金を迅速に給付した。中小法人には上限200万円、個人事業者には上限100万円を支給した。
申請方法は原則、電子申請だった。電子申請が困難な人向けに、申請サポート会場を全国に620カ所設置した。
令和2年5月から令和3年2月まで申請を受付し、441万者(内個人事業主67%、法人33%)からの申請を受付し、424万者に5.5兆円を支給した。
「持続化給付金」事業の経費は、委託会社2社合わせて約1000億円、その内申請サポート業務関連が365億円だった。
持続化給付金評価者は、デービッド ・アトキンソン・小西美術工藝社社長、池田肇・野村証券常務、伊藤伸・政策シンクタンク構想日本総括ディレクター(取りまとめ評価者)、上山直樹・ウィザーズ弁護士法人パートナーが務めた。
持続化給付金評価者からの主な意見は次の通りだ。
- 持続化給付金の支給額5.5兆円について、廃業や倒産件数の過去との比較などで効果をモニタリングすべきだ。
- 申請サポート業務は、最大9次請けと複層的な外注を重ねている。複層化すれば経費は増えることは自明の理だ。再委託の際は、間接コストが増大しないようチェックを厳格にすべきである。
- 自ら電子申請しなかった案件に無償で対応したため、多額の経費がかかった。申請者に負担を求める検討をしても良かったのではないか。
河野太郎行政改革担当相は、「コロナが良くわからない中で取り組んだ。今後の危機に備える為にも、デジタル技術を活用した事業者への適切かつ迅速な給付のスキームを更に強化する。デジタル時代にアナログ的現状は改善すべきだ」と強い覚悟を示した。