記事のポイント
- 米ニューヨークで弁護士が立ち上げたコーヒーショップが話題だ
- 貧困状態が多いコーヒー農家への公正な賃金を保証する
- 支援内容ごとに4色で色分けし、支援の仕組みをわかりやすく表示した
米ニューヨークで弁護士が立ち上げたコーヒーショップが話題だ。コーヒー農家の8割が貧困状態であるなか、生産者への公正な賃金を保証する。支援内容ごとに色分けし、来店客に支援の仕組みを分かりやすく表示した。(ニューヨーク=古市 裕子)
そのコーヒーショップの名称は、「シンク・コーヒー」だ。本店は、ニューヨーク大学前にあり、地元住民に人気だ。
創業は2006年。弁護士のジェイソン・シェール氏が立ち上げた。コーヒー豆の生産者に労働対価が正しく還元されていないことを知り、この課題を解決するため一念発起した。現在、12店舗をニューヨークで展開する。
生豆をエチオピア、コロンビア、ニカラグアの農家から直接購入する。コーヒー農園で働く生産者が公正な賃金を受け取れるようにすることを目指す。
ジェイソン氏は、生産者を直接支援するための取り組み「プロジェクト・コモン・グッド」を立ち上げた。この取り組みでは、3つのステップで生産者への公正な賃金を保証する。
一つは、コーヒー農園での「公正な生活賃金」の内容と程度を見極めること。二つ目は、生産者と農場所有者の双方に生活に必要な報酬を保証することだ。保証することで、輸出業者との価格交渉の条件になる。最後は、収穫量に応じて賃金を支払うようにしていることだ。週給か月給に換算し、生活可能な給与水準に応じる。
■商品を支援内容で色分け
来店客にもこうした支援を分かりやすく示した。支援内容ごとに4色で色分けした。色ごとに支援内容を変えた。
緑色は、ニカラグアで清潔な生活飲料水にアクセスするインフラ整備に支援する。ニカラグアの農園では、安全な飲料水の不足が問題だ。2017年以来、11の井戸を改修し、1千人以上に安全な飲料水を提供してきた。
その他、黄色は、コロンビア農園と近隣住民の住宅環境の整備に、ピンク色は、コロンビア農園の災害対策を支援する。
コロンビアでは2016年、断層のズレで民家が崩壊し多くの農民が家を失った。コーヒー復興活動を支援し92世帯に建築資材を配布した。
エチオピアの女の子の保健衛生環境の向上支援は青色だ。同国では、生理用品不足が原因で若い女性が学校を退学する状態が続く。2014年以来、1750個以上の再利用可能な生理用品を配布し、2021年に女性教育サービスを支援した。
ジェイソン氏は、「グローバル経済の中で弱い立場に置かれやすい途上国の生産者の生活を支援する際、その仕組みを公開することが重要だ」とオルタナの取材に話した。
「我々の調達方法はまだ不完全だ。コーヒー産業が直面する課題は膨大で、地域によって農業や輸出の仕組みが異なる。世界中に蔓延する貧困問題に万能の解決策を示すことはできない」と明かす。
だが、「継続的な取り組みが、農家の労働条件を改善し、コーヒー産業の持続性の向上に寄与する」と力を込めた。2023年6月には日本に進出した。1号店を東京・神田にオープンした。