ファッションブランドの透明性を格付け、高評価はグッチなど

記事のポイント


  1. 英の非営利組織が250の主要ファッションブランドの「透明性」を格付けした
  2. 公開済みのサプライチェーンにおける人権・環境方針などを分析した
  3. イタリアのOVS(オヴィエッセ)、グッチなどの評価が高かった

英国に拠点を構える非営利組織FASHION REVOLUTION(ファッションレボリューション)はこのほど、主要ファッションブランドの「透明性」を格付けした。年間売上高が4億米ドル(約570億円)以上の250の大手ファッションブランドを比較した。公開済みの人権・環境方針などを分析した結果、最も高い評価を得たのは、イタリアのファストファッションブランドOVS(オヴィエッセ)だった。(オルタナS編集長=池田 真隆)

ファッションレボリューションは2017年から、ファッションブランドの透明性の格付けを行う。毎年、「ファッション透明性インデックス(FASHION TRANSPARENCY INDEX)」と題して、公表している。

2023年版では、世界の大手ファッションブランドと小売業者250社を対象に調べた。日本企業はユニクロ、GU、アシックス、MUJI、ミズノ、ユナイテッド・アローズ、イトーヨーカ堂、しまむらが調査対象に入った。

評価指標は多彩だ。気候変動、デューデリジェンス、生物多様性、動物福祉などに加えて、男女平等や生活賃金、労働条件などもある。指標の数は258に及ぶ。

透明性とサステナビリティは異なり、透明性があるからといって、サステナブルであるとは限らない。だが、同団体は、透明性なくして、公正なファッション業界を実現することは不可能であると考えた。この考えから、透明性を分析したインデックスを公表し、企業に持続可能性とアカウンタビリティ(説明責任)を求める。

日本はユニクロ、GU、アシックスが高評価

世界250のブランドの全体平均スコアは26%で、昨年からわずか2%の上昇にとどまった。ファッション業界の透明性は「微増」という結果だった。

調査対象になった日本企業のブランドでは、ユニクロ、GU(ともにスコア50)、アシックス(45)が高い評価を得た。MUJI(28)、ミズノ(18)、ユナイテッド・アローズ(17)、イトーヨーカ堂(11)、しまむら(4)と続いた。

最多得点は、83%を獲得したイタリアのファストファッションブランドOVS(オヴィエッセ)だった。次いで80%のグッチ、Kマート・オーストラリアとターゲット・オーストラリア(76%)だった。

2位に入ったグッチは昨年から21ポイントも上昇した。背景には、ラグジュアリーとサステナビリティの相関性が明らかになってきたことがある。

ラグジュアリーブランドは情報開示に関して後ろ向きだったが、情報開示を強化するブランドが相次ぐ。今年最も躍進した5ブランドはすべてラグジュアリーブランド(グッチ、アルマーニ、ジル·サンダー、ミュウミュウ、プラダ)だった。その中でも、最も伸びたのがグッチだった。

99%のブランドが労働者の人数を非公開

透明性を担保するには、サプライチェーンの対応は欠かせない。一次サプライヤーリストを開示したブランドは、今年初めて半数を超えた(52%)。

一方、94%のブランドは、自社の衣服の製造にどのようなエネルギーを使ったか開示していなかった。さらに、99%のブランドは、自社サプライチェーンで生活賃金を支払った労働者の数を開示していなかった。CEOと縫製労働者の賃金格差は拡大していた。

ファッション·レボリューションのリブ・シンプリシアーノ・ポリシー&リサーチ・マネージャーは、「社会的不平等や環境破壊が深刻化する中で、様々な法律が制定されようとしている。その中で進歩が見られなかったことは憂慮すべきことだ。少数のブランドがようやく80%以上のスコアを獲得したことは喜ばしいが、100%の透明性でさえ出発点に過ぎず、多くの大手ファッションブランドはまだレースに参加すらしていない」と訴えた。

翻訳を担当した一般社団法人unisteps理事のマルティンメンド有加氏は今回の結果を受けて、日本の事業者向けに下記の通りコメントした。

「ファッション透明性インデックスでは、今回、一次サプライヤーの開示率が初めて50%を超えた。本調査で対象になっている250社は世界最大の事業者であり、ほとんどの企業には透明性を追求する人手もコストも不足しているのが現状だ。また、顧客からの要望としても現れていないと感じるかもしれない。しかし、近年の特に欧州の法整備の動向をみると、情報の特定と開示による透明性の確保が世界的な流れになっていることは間違いない」。

「日本の事業者の皆様には、調査対象になっていなくても、本インデックスで調査されている項目をご覧いただき、一言で「透明性」といってもどのような点が具体的に論点になっているのかを確認していただきたい。その上で、自社の現状把握を進めることが透明性向上への第一歩となる」

・「ファッション透明性インデックス」(日本語版)のダウンロードはこちら

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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