インタビュー:「対話」が企業を生かす―「法令順守」は誤訳

─2010年11月にISO26000が発行されましたが、直後の東日本大震災の影響もあり、日本では浸透が思うように進んでいない感じもあります。

経済危機を背景に、規制としてのISO26000が、世界的に見て、下火になりつつあることは事実です。しかし、今後、そのガイドラインを積極的に活用しようとする企業と、そうではない企業との間には、かなり大きな企業価値の差が生じるはずです。

ISO26000への対応を単なる「課題」としてとらえるのではなく、企業経営のスタイルをどう変えていくのかという視点でとらえ直すと、新しい論点が浮かび上がります。

その一つが先ほどお話したソフトローとハードローの話です。ISO26000のポイントは、「どの社会問題を、どのステークホルダーと解決するか」ということです。ところが、多くの日本企業のCSRレポートはいまだに「その企業の課題集」または「どのステークホルダーに対応するか」に焦点を絞っています。

様々な社会問題が発生する中、企業に求められるのは、どの社会問題を解決しようとしているのかを定めることです。そのうえで、当該社会問題を解決していくためには、どのステークホルダーとかかわるべきかを考えることです。

八方美人的な発想から、目先に迫る社会問題にどうかかわっていくのか、というアプローチへのシフトが起きていることにまだ、十分に気付いていない日本企業も多いです。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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