「リベラル・アーツ」を備えた人材を
─約400年前の東インド会社設立以来、企業は常に社会の上に成り立ってきました。CSRは21世紀に突然出てきた概念ではないはずです。
長寿企業を研究してみると、共通するのは、自分たちの信念を保ちつつ、環境変化に適応してきたことです。この二つのバランスが持続的可能性を担保してきたのでしょうね。
─家電メーカーも軒並み巨額の赤字を出すなど、日本の閉塞感は増すばかりです。CSRやCSV(クリエーティング・シェアード・バリュー)がそのブレークスルーのきっかけとなると期待されていますね。
最近よく言われる「CSRは企業価値を向上させる」という考えはよく分かります。しかし、そこには言葉の乖離があります。単にCSRを行えばいい訳ではありません。
これまで誰も成し得なかった社会問題の解決を、ほかのセクターと連携し、成功させることが必要です。当然、そこには技術革新も伴います。途上国における社会貢献活動が、先進国でのビジネスにプラスの付加価値をもたらすリバース・イノベーションが起きることも期待できます。
そのためには、異分野と連携できる調整力を持った人材を育成しなければなりません。そこで重要なのが「リベラル・アーツ」です。
リベラル・アーツを学び、交渉術を身に付けた人材が、異なる価値観を持った人たちをまとめ上げることで、誰もが解決困難だった課題に対してイノベーション的発想を通して解決させます。
共通の命題に対して、社会視点を持ちながら、異分野の人間が混ざりあうことで、イノベーションを起こし、問題解決を図ることで、結果として企業の価値を高める。それがCSRの「あるべき姿」です。