■ 「日本人は心の底から憤っていい」
村上氏によると、日本には大きな問題が3つあるという。
――誰も責任を取らないこと、日本に国民投票がないこと、緑の党がないことだ。(中略)市民運動が働きかけているように、国民が国家レベルで直接投票する選択肢が日本にあれば、大多数が原発に反対だと表明するだろうと村上は確信している。「でも、私たちにはそれがないため、人々は意思表示ができないのです。彼らには現在の政治家たちと戦う力がありません」(Reportage Japanから引用、注:緑の党は2012年7月に結成)
ブランドナー氏が補足する。
「『政治家の指導力が不足し、私がバルセロナでスピーチをしてもそれを掬い上げる政治力がない。グランドプランを示せる人もいない。国民投票制度が存在せず、国民が意志を発表できないことは、原発事故で生活の基盤が失われてしまった福島の人たちにとって不幸なことだ』と話していました」
村上氏が多くの日本人は原発に反対しているのを感じたのは、バルセロナでのスピーチを聞いた知り合いの反応からだ。ラジオ放送で流れたインタビューの中でもこう語っている。
「僕の知っているほとんどの人は(スピーチの内容に)賛成してくれたし、日本人の中で、原子力発電は間違っていると思っている人は多いのだと思いました」
中にはインターネット上で村上氏に否定的な発言もあった。だが調べて見ると、それは東電の社員がやっていることが多かったと言う。
村上氏は、日本人のまじめで強い資質をもってすれば、原発をなくす事はできると語る。
――原子力の撤廃は可能だと彼は確信する。日本がテクノロジーの面で、代替エネルギーに振替えられるからというだけではない。日本人の独特の「国民的な気質」にもよる。「一旦、国家目標が決められれば、全員がそれを達成するよう努力します。一旦、何かが決定されれば、全員そろってそれに従います。もし原子力の撤廃が決まれば、全員が絶対に努力してその実現に協力し、自分たちの電力消費も喜んで減らすでしょう。けれども、いまはそんなふうに目的を決定する人が誰もいないのです」(Reportage Japanから引用)
日本人は感情を出すことが得意ではない。だが、10万人以上が自分の土地を離れなくてはならなくなった今回の原発事故では、「日本人は心の底から憤っていい」と村上氏は考えている。
その一方で、こんな疑問も呈した。
「『広島、長崎への原爆投下でたくさんの人が死んだのに、どうして原発ができたのか。それはよく分からない』、『政府が原爆は悪い、原発は良いと教育や情報操作をしていたのは大きいことだと思う』とも言っていました」(ブランドナー氏)