原爆投下から68年目を迎えた長崎で9日、平和祈念式典が開かれた。長崎市の田上富久市長は平和宣言で「日本政府に、被爆国としての原点に返ることを求める」と述べ、被爆国でありながら核廃絶に向けて積極的に動こうとしない政府の対応を批判した。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
この中で田上市長は、4月にジュネーブで行われたNPT(核不拡散防止条約)再検討会議の準備委員会で、核兵器の非人道性を訴える署名に賛同しなかった政府の対応について「世界の期待を裏切った。人類はいかなる状況でも核兵器を使うべきでない、という文言が受け入れられないならば、核兵器の使用を状況によっては認めるという姿勢を示したことになり、被爆国としての原点に反する」と指摘。インドとの原子力協定の交渉再開についても「NPTに加盟せず核保有したインドへの原子力協力はNPTを形骸化する。朝鮮半島の非核化の妨げにもなる」と訴えた。
平和宣言で田上市長は「被爆国の原点に返れ」という文言を2度使用。東電原発事故についても「未だ収束せず、放射能の被害は拡大している。多くの方々が平穏な日々を突然奪われ、将来の見通しが立たない。長崎は福島の一日も早い復興を願い、応援する」と述べた。
平和式典では、長崎県の中村法道知事も「NPT会議で、日本が核兵器の非人道性を訴える署名の署名国に加わらなかったことを大変残念に思う」と言及。安倍晋三首相はあいさつで6日の広島に続き、原発政策について触れなかった。