第二に、会議会場に設けられた情報発信コーナーには、「克服」されていない水銀被害を訴えるブースが並んでいた。
水俣病の被害を国に認めてもらうため国と裁判中の原告や、水俣病だと認定してもらえない未認定被害者、未処理のまま水銀が埋め立てられている「エコパーク水俣」の危険性を訴える市民らがいた。
被害者の話を聞いたアフリカからの参加者は、「どうして明らかに水俣病の症状があるのに、政府は認めないのか」と苛立ちを隠さなかった。エコパークを訪問した米国人は、「地下に未処理の水銀が埋まっていることを考えると、その場に立っていることが奇妙に感じられた」と話す。
厳しい水俣の現状がある一方、本会議場から聞こえてくるスピーチと拍手は、参加者にある種の達成感を与えていた。外交会議という華々しい場が、水俣病を「克服したもの」と錯覚させる場であってはならない。
今後、安倍首相の「克服」発言で勢いづいた日本政府は、世界に向けてどんな「水俣病の教訓」を輸出していくのか。加害者が考える幕引きの「教訓」であることは許されない。
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