取材対象者とは人づてに出会った。彼らの語りは、「明日も今日と同じような日が来ると信じていた」普通の人々が突如として被災者になった現実を、浮き彫りにした。
「なみのおと」は2011年の夏に、岩手県から福島県までの沿岸部で、「なみのこえ」は2012年の秋に、宮城県気仙沼市と福島県相馬郡新地町(しんちまち)で、撮影された。
映画では、夫婦や親子、仕事仲間や友人など、さまざまな組み合わせの2人がカメラの前で向き合い、改めて自己紹介を交わし、震災当日のことから話し始める。
約3時間の語らいは、各組15-30分程度に編集された。「たわいない談笑もあったが、そんな気楽な日常こそが津波で奪われたものだったはず」(酒井監督)、「地震や津波の話よりも、本当に心から話せていると感じられた瞬間を集めた」(濱口監督)。
この記録を後世に残したいと考えた両監督は、何百年も継承されてきた民話に、語りの原点を見出した。そこで「みやぎ民話の会」の聞き手と語り部を撮影して、その映画「うたうひと」でシリーズを完結させた。三部作は、11月9日からオーディトリウム渋谷、16日から渋谷アップリンクで上映される。
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