編集長コラム) 「がんばらない経営」とは何か

もう20年前のことなので、どんな記事を書いたのかも忘れましたが、インタビューが終わった後、おいとまする直前にこんな質問をしたのです。

「株主と従業員と顧客ではどれが一番大切ですか」

当時から、企業買収を巡って株主と経営陣や社員が対立するたびに、「会社は誰のものか」という命題がよく話題になっていました。

私も、その流れで、あくまで参考のために上記の質問をしたのですが、加藤さんの答えはまったく予想をしないものでした。

「一番大切なのは従業員です。従業員を幸せにしないと、お客さまを幸せにすることはできないからです」

加藤さんの答えには、株主という言葉すら出てきませんでした。その時は分かったような分からなかったような気持ちでしたが、それから20年たっても鮮明に覚えているということは、よほど私の心に刺さり続けた言葉だったからでしょう。

結論を書きますと、「がんばらない=無理をしない」ことだそうです。できもしないことを社員に押し付けても、到底達成できるわけはありません。それどころか社内の雰囲気が悪くなってしまいます。

さらには、定時退社に週休2日、数値目標で縛らない、従業員が安心して長く勤められる制度づくりをされてきたようです。

社員持ち株制度を導入し、その後の株価上昇や株式分割もあって、保有資産が8億円に達した社員もいるとのことです。その配当は、勤務していた時代と変わらないそうです。

さて、世の中の会社の9割くらいは、私を含め、社長が幹部や社員に「がんばれ」とか「数字を出そう」と言い続けているはずです。それでもなかなか達成できずに、経営者はどうすれば良いのか、日々、悩んでいるはずです。

この本は、そんな経営者に是非読んでほしいと思いました。そして、その答えこそが、弊社オルタナが探し続けていた「21世紀のビジネスのモノサシ」の一つになると確信しています。正月早々、良いものを読ませて頂いた、という気持ちです。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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