「カーボンオフセットでは森林減少は止まらない」と報告書

記事のポイント


  1. 世界の科学者から成る国際森林研究機関連合が報告書を発表した
  2. カーボンオフセットなどの市場メカニズムは、森林保全に効果がないとする
  3. 持続可能性よりも短期的な経済的利益を優先する傾向が強まっていると指摘

国際森林研究機関連合(IUFRO、本部:オーストリア)はこのほど、カーボンオフセットなどの市場メカニズムは、森林保全にほぼ効果がないとする報告書を公開した。森林を炭素吸収源とみなし、短期的な経済的利益を優先する傾向が強まっていると指摘。同報告書は、5月10日まで開催されている国連の森林フォーラムで発表される。(オルタナ副編集長=吉田広子)

IUFRO は、120カ国の科学者1万5000人から成る世界的なネットワークだ。IUFROがまとめた報告書「国際森林ガバナンス」は、カーボンオフセットや認証サービス、森林関連の投融資など、市場主導型のアプローチでは、森林減少は止まらないと警鐘を鳴らす。

報告書は、気候変動対策の炭素吸収源として、森林減少率を過度に重視し、「オリンピック」のように、世界で森林保全の目標が生まれていると主張。一方で、生態系サービスなど、森林の多面的な役割を無視しているとした。

報告書は、世界各地でカーボンオフセットのプロジェクトが立ち上がったが、その多くは森林減少の効果が出ていないと指摘。さらに、利益を得るのは一部の企業や金融機関などで、貧困や不平等は拡大していると批判した。

報告書の主著者の一人、コンスタンス・マクダーモット・オックスフォード大学教授は、「市場主導型のアプローチは不平等を継続させ、持続可能な森林管理に逆効果をもたらすリスクがある。国家規制や地域主導のイニシアティブなど市場以外のメカニズムは、公正な森林ガバナンスの代替になる」とコメントしている。

フランクリン・オベン・オドゥーム・ヘルシンキ大学教授は、「社会的包摂を追求し、社会的環境的不正義を是正し、資源に依存するコミュニティの土地権利を保護し、より公正な移行を支援しなければならない」と強調した。

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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キーワード: #生物多様性

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