働く女性の8割は産後復職、ポーラが産後ケアアプリで後押し

記事のポイント


  1. ポーラは、肌データから産後ママの心身の状態を把握するアプリを開発
  2. ビックデータを活用した実証実験も順調に進み、未病を可視化するブランドにも選定された
  3. 在職中に出産する女性の8割が育休を取得する中、体調や心のケアで復職を支援する

ポーラは、肌データから産後女性の心身の状態を把握するアプリ「ママニエール(mamaniere)」を開発した。AIを活用したポーラ独自の肌分析システム「APEX(アペックス)」が、今と未来の肌の状態を分析する。在職中の産後女性の8割が復職を希望する中、心身のケアを行い、復職に向けて後押しする。(シンカ・大坂千晶)

「ママニエール」は肌状態から産後女性の心身状態を把握する

ポーラは1929年の創業以来、女性のための商品開発や、女性を支援する活動に取り組んできた。

同社は一人ひとりの肌に合わせたスキンケアの提案に注力するが、その基となるのが、独自の肌分析システム「APEX(アペックス)」だ。AIを活用して約2070万件の肌データを活用し、今と未来の肌の状態を分析する。

ポーラは2023年7月、「APEX」を活用した産後女性のケアアプリ「ママニエール」を発売した。スマートフォンで顔を30秒撮影すると、心身の状態を分析し、その状態に合ったサービスを受けられる。数値化したデータは、共有することもでき、周りの人に手助けを求めやすい設計だ。

■出産・育児を経験した女性の約3割がうつ状態に

こうした肌データは、産後女性の心身状態の把握にも役立っている。

厚生労働省の雇用均等基本調査(2022年度)によると、日本では、産後女性の80.2%が育児休暇を取得する。ま神奈川県立保健福祉大学の調査では、コロナ禍で出産・育児を経験した女性の28.7%が産後うつ状態にあることが明らかになった。

そこで、ポーラは、同志社大学看護学部、オンラインカウンセリングを手がけるcotree(コトリー、東京・港)、切れ目のない子育てを支援する一般社団法人クレイドル(東京・杉並)と協働し、育休復帰に向けた産後ケアの実証実験を実施している。

1回目の実証によって、参加した女性の9割以上に心身状態スコアの向上が見られており、母体のケア、育児への不安解消、職場復帰を見据えたモヤモヤの解消などの効果を確認した。

ポーラのmamaniere事業責任者の馬場喜美子氏は、「『産後は大変で、ボロボロになる時期でもしょうがない』という今までの当たり前を塗り替え、産後の時期にも、心と体に余裕をもって生活を送れる社会を創ることが、ミッションだ」と意気込みを語った。

「産後は、ほんの一瞬のわずかな時間だと思われるかもしれないが、生命が誕生し、その生命の一生の礎になる、非常に重要な時期だ。私たちは、この時期に、心身ともに健やかに過ごせる環境を作ることで、ママのケアだけでなく、そこで育っていく子どもたちの健やかな未来も支えていきたい」(馬場氏)

「ママニエールでは、テクノロジーによって、今まで入手困難で研究が進まなかった産後女性の心身データの蓄積が叶う。そのデータを活用することで、今、目の前にいるママをケアするだけでなく、これから先の産後ママにとってもより良い世界を作っていきたい」(同)

2023年10月、「ベビーテック2023 妊活と妊娠部門」で大賞を受賞したこのアプリは、2024年3月には、神奈川県から未病の見える化や未病の改善につながる優れた商品・サービスとして「ME-BYO BRAND」に認定されたほか、「ウェルビーイングアワード2024」のサービス部門でもGOLD賞を受賞した。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #ウェルビーイング

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