記事のポイント
- ロッテはガムのかむ力を数値化し、健康リスクの特定につなげる
- 専用アプリと組み合わせると無料で咀嚼力を測定できる
- 高齢化が進む中、健康改善につながるガムの新しい価値を伝える
ロッテ(東京・新宿)はガムの「かむ力」を数値化し、健康リスクの特定につなげる。専用のアプリと組み合わせることで、咀嚼力を測定できるようにした。高齢化が進み、健康志向が高まる中、ガムの価値転換を図る。同社の中央研究所チューイング研究部チューインガム研究課に所属する弘田裕介主査に話を聞いた。(聞き手・オルタナ副編集長=池田 真隆)
※ロッテの「キシリトール咀嚼チェックガム/咀嚼チェックアプリ」は、オルタナとサステナ経営協会が共催する「サステナブル★セレクション2024」の三つ星に選ばれました。次回の一つ星エントリーは、2025年1月14日まで受け付け中です。エントリーフォームはこちら
※「サステナブル★セレクション」とは、サステナブル(持続可能)な理念と手法で開発された製品・サービスを選定し推奨する仕組みです。
一つ星(★)は、製品・サービスが、持続可能な社会づくりに貢献していることを表します。
二つ星(★★)は、★に加え、企業・組織がサステナブル経営に取り組んでいることを表します。
三つ星(★★★)は、★★の中から特に大きな社会的インパクトを生み出していることを表します。
サステナブル★セレクション公式ページはこちら
――ガムとアプリを組み合わせて「かむ力」を測定します。どのような仕組みでしょうか。
「キシリトール咀嚼チェックガム」と「咀嚼チェックアプリ」を組み合わせて咀嚼力を測ります。「キシリトール咀嚼チェックガム」は歯科医院専用商品として発売していますが、アプリは無料でダウンロードできます。
ガムを口に入れてアプリ画面のカウントに合わせて60回咀嚼します。その後、ガムに付属している測定用台紙にガムを置きます。そのガムをスマートフォンで撮影し、画像をアプリに読み込ませます。
咀嚼する前のガムは緑色ですが、かむ力が強ければ徐々に赤色に変わるようになっています。その色の変化を識別して、0~10.0の100段階で評価します。
近年、高齢者の口腔機能と身体機能の調査研究において、オーラルフレイル(口のささいな衰え)という概念が提唱されました。オーラルフレイルの状態の高齢者は数年内にフレイル、サルコペニア、要介護(致死)のリスクが約2倍高くなるという研究*もあります。
※TANAKA, Tomoki, et al. Oral frailty as a risk factor for physical frailty and mortality in community-dwelling elderly. The Journals of Gerontology: Series A, 2018, 73.12: 1661-1667.
※オーラルフレイルの定義は2024年に改訂されました。上記論文作成時と定義が異なります。
このガムとアプリで健康寿命の延伸・well-being向上に貢献していきたいと考えています。
――開発の経緯を教えて下さい。
「キシリトール咀嚼チェックガム」は、当初ガムを噛んで総入れ歯の噛みやすさを判断できるツールとして開発しました。東京医科歯科大学(現在は東京科学大学)と共同で1997年から研究・開発を始め、2004年に歯科医院専用商品として発売を始めました。
ガムができる前には、一般的にピーナッツを使って咀嚼力を測っていました。ピーナッツを咀嚼してもらい、咀嚼前後の重量減少の割合で咀嚼力を評価しました。しかし、この測定には時間と手間がかかる上、研究施設など限られた場所でしか測定できないものでした。
噛むことで色変わりするガムのアイデアにたどり着き、ガムの色変わりの状態によって咀嚼能力を評価する、現在の咀嚼チェックガムに近い形状になりました。そして、2023年に「咀嚼チェックアプリ」を開発しました。
ロッテにとっては、研究開発のアプリは前例がなく、どこに相談すればいいのか分からない時もありました。学術的な信ぴょう性も求められます。アプリ開発の構想は2017年に始まり、6年後の2023年にようやく完成しました。
――利用者は増えていますか。
これまでのアプリの利用回数は累計で8万回を超えました。利用回数は着実に増えていき、直近では毎月2千回ほど利用されています。
「キシリトール咀嚼チェックガム」は歯科医院の専用商品ですが、オーラルケアに関心の高い自治体や小学校などの教育機関が配布することもあります。
アプリを使ったからといってすぐにガムの売上高が増えることにはつながらないと思っています。このサービスでは、咀嚼能力の重要性を伝えることに意義があります。
現状の健康状態に関心を持ってもらうことに加えて、咀嚼への意識も高めてもらうことが狙いです。具体的な売上目標はたてていませんが、健康の啓発はサステナビリティ目標の一環なので、重要な取り組みと位置付けています。2028年までにアプリの利用回数100万回を目指しています。
※ロッテの「キシリトール咀嚼チェックガム/咀嚼チェックアプリ」は、オルタナとサステナ経営協会が共催する「サステナブル★セレクション2024」の三つ星に選ばれました。次回の一つ星エントリーは、2025年1月14日まで受け付け中です。エントリーフォームはこちら