フォアグラについては、フランス本国でも、昨年フォアグラを禁止した米カリフォルニア州でも大きな議論を呼びました。今回のようなフォアグラ反対運動が、エシカルな飼育方法を後押しすれば、問題は解決に向けて大きく前進することでしょう。
ファミリーマートの場合は、意見(A)のように、過剰反応だったかもしれません。そうだとしても、「種火」の段階で対応したという意味で、評価に値します。種火がボヤになり、延焼する前に対処するという企業の態度は、危機管理の観点からも、重要な判断です。
意見(B)の缶チューハイのカエルCMや、全日空のCM中止についても、多くの市民・消費者にとって不可解だったかもしれません。しかし、これも重要な危機管理のプロセスだったと思われます。
このような問題が起きると、企業の担当者は「消費者の声は全て聞かなければならないのか」と思われるかもしれません。そうではなく、企業はさらに論理的で冷静な判断が必要なのです。すべての「種火」について、延焼する可能性はあるのか、あるいは自然鎮火するのかを的確に見極めなければなりません。
10年ほど前に、花王を取材したときに、同社のお客さま相談室では、消費者から重大な指摘があった場合には、その情報が全役員の携帯電話にメール送信されると聞きました。
しかしその後、花王が買収したカネボウでは、美白化粧品による白斑問題が発生しました。おそらくは、花王の仕組みはカネボウでは生かされなかったのでしょう。
製品の瑕疵など、目に見える損害を生む事例であれば判断は難しくありませんが、いわゆる「世論」や「市民感情」は判断が非常に難しいです。しかも、市民感情は日本独特のものもあれば、グローバル共通のものがあります。A国で受け入れられてもB国で受け入れられないものもあります。その意味で、グローバルな企業は、国や市場ごとに、よりキメ細かい判断が必要です。
今後、日本では消費者保護の動きが強まるとされています。いわゆる日本版クラス・アクション法(消費者団体訴訟法)が2013年12月に成立(3年以内に施行)し、消費者にとって訴訟参加のハードルが下がりそうです。
10年前には無視できた事例が、今は無視できなくなっているのです。これは企業にとっては新たな負担ではありますが、世論への対応なくしては、企業の成長は有り得ないところまで、その重要性は高まっています。(オルタナ編集長 森 摂)
(この続きは、朝日新聞社WEBRONZAの筆者連載コーナーに近日掲載します)