[CSR] サントリー、「水と生きる」を森林整備で実践

■自前で調達する「天然水」だからこそ

――同業他社と比べても、群を抜いた面積ですね。(キリンビールが1,241ha、アサヒビールは2,165ha)

内貴 同業他社が使っている水は、基本的には工場用水で、自治体などから水を買い取って使っています。ですから、水源涵養に責任を持たなくてはいけないという発想は、あまり無いのかもしれません。なぜならば、工場用水として供給している側に水源涵養する責務があり、買っている側にはその責務がないはずだからです。サントリーは、ウイスキーとビール、ミネラルウォーターは、100%自前で調達する天然水を使っていますから、考え方が全く違います。

――森林の生態系保全にも注力していますね。

内貴 針葉樹林で木と木の間に何も生えていない土地では、雨が降ると土砂が流れてしまいます。そうすると、地面にしみ込んでくれるはずの水がどんどんなくなっていき、仮に工場の水源涵養地の土壌の厚みが半分になったら、使える水の量は半分になるわけです。

間伐後の森

しかし、間伐をすれば、下草がいっぱい生える。場合によっては、針葉樹林でも広葉樹も生えてくる。多様な草、木が生きている森になっていきます。そういう森は、雨が降っても土が流れ出ていかないし、土の中のミミズや微生物、動植物などを含めた大きな生態系の健全性を維持できます。それが、我々の生態系保全の方向性です。

そのことで、森の価値そのものが上がっていきます。それは、社会にとっても有益な価値だと思います。われわれは、地下水のため、つまり事業のためにやっていますが、そのこと自体が日本の森林を豊かすることにつながるのであれば、事業と直結しながらも、社会貢献的な意味を持つのだと思っています。

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高馬 卓史

1964年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。総合情報誌『選択』編集長を経て、独立。現在は、CSR、ソーシャルビジネス、コミュニティ・デザインなどをフォロー中。執筆記事一覧

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