「コンプリートガチャ」もその一例だ。確かに射幸性の観点からは弊害もあったが、社会のニーズが高かったことも事実だ。しかし、何も対応をせず問題を放置したために、規制当局の指導でサービスを終了せざるを得なくなった。もう少し早い段階で消費者団体など、ステークホルダーとの対話を通して落とし所を模索しておけば、事業自体を終了する必要性はなかったのではないか。

またお掃除ロボット「ルンバ」にも同様の指摘ができる。実際にお掃除ロボットを最初に開発していたのは日本だったことは有名だ。しかし、「ロボット法」のような法律がないため、法律を厳格解釈して開発を中止してしまった。その後、法律がより厳格な米国で先行開発されたものが日本に輸入された途端、爆発的にヒットし、結果、日本のメーカーはシェア争いで苦戦している。

これらから共通してわかることは、法律で明確にならないグレーゾーンについては、ステークホルダーとの対話と議論に基づく落とし所を模索して、自らルールを創造していかなければならないということだ。すなわち、ルールは、与えられたものを守る時代から、ステークホルダーとの対話を通して、積極的に創造していく時代へと変化しているということである。

そして、そのステークホルダーと対話をしていくプロセスこそがCSR活動ということになる。

海外のNGO が薬品会社に対して動物実験などの頭数をコミットさせ、CSR 報告書での開示を求めていることも同様と言える。

どの程度まで動物実験を行って良いのかという明確な基準は定めようがなく、法制化すれば、かえって企業にとって不都合な規制になりかねない。

そこで、社会の代表であるNGO との対話の中で、どこまでであれば許容されるかという落とし所を、対話と議論を通して模索し、それを開示しているのである。

「コンプライアンスとは、法令を守ること」という呪縛を解き放ち、発想を180 度転換する必要がある。そして、それに応じた人材育成の方法、具体的には、知識偏重の人材育成から、問題解決型の人材育成のあり方はどうあるべきなのかを考えていくことが求められている。次回は社会が求める人材について触れたい。

【おおくぼ・かずたか】新日本有限責任監査法人シニアパートナー(公認会計士)。新日本サステナビリティ株式会社常務取締役。慶応義塾大学法学部卒業。教員の資質向上・教育制度あり方検討会議委員(長野県)。大阪府特別参与。京丹後市専門委員(政策企画委員)。福澤諭吉記念文明塾アドバイザー(慶應義塾大学)。公的研究費の適正な管理・監査に関する有識者会議委員。京都大学・早稲田大学等の非常勤講師。公共サービス改革分科会委員(内閣府)ほか。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第2号(2012年11月5日発行)」から転載しました)

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