地域を活性化する観光ツーリズムと企業連携【戦略経営としてのCSR】

大久保和孝

大久保 和孝(新日本有限責任監査法人CSR推進部長)

キリンビールが展開する「東北復興・農業トレーニングセンタプロジェクト」の一環で、ニュージーランドを訪ねた。同国は自然しかコンテンツがない中、観光ツーリズムを中心とした地域活性に取り組む。特にクイーンズタウンの事例は参考になる。

19世紀にゴールドラッシュで栄えた後衰退していたが、近年、観光産業を中心に地域活性に成功した。今では人口2万人の町に年間260万人が宿泊し、1200億円を消費する。町全体で約1万2000床の宿泊施設に対し、国内外から毎月30万人が訪れる。

特に、海外からの観光客は年間を通して滞在し、閑散期がない。調査によれば、美しい景観、リラックス、アドベンチャー・エキサイティング、清浄な環境、親しみやすい人々、そして安全性を期待して訪れている。また満足度調査では8.8点/10点、約9割もの人が他人に紹介したいと思っている。

同市の主な成功要因は、コンセプトに魅了されたリピーターを増やし安定的な顧客をつかんだこと、観光産業のマネジメント力強化への支援の枠組みの構築、観光産業の競争環境の整備があげられる。単に自然の良さや、よくあるアトラクションやイベントなど、コンテンツの紹介ではなく、地域の人々の暮らしや文化を中心とした、地域のコンセプトで訪問者を魅了する。経済が安定し、価値観が多様化すると、コンテンツだけでは差別化しにくい。

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大久保 和孝

株式会社大久保アソシエイツ代表取締役社長(公認会計士・公認不正検査士)。慶應義塾大学法学部卒。前EY新日本有限責任監査法人経営専 務理事(ERM本部長)。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授、商工組合中央金庫取締役、セガサミーホールディングス監査 役、LIFULL取締役、サーラコーポレーション取締役、サンフロンティア不動産取締役、武蔵精密工業取締役(監査等委員)、ブレイン パット監査役、他多数の企業等の役員に就任。

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