
このユニークな研修を企画したのは、白井グループ(東京・足立、白井徹代表)だ。数年前から南伊豆で泊りがけの研修を行ってきた。
今年からは加藤商事・加藤宣行社長(東京産業廃棄物協会、常任理事)やTBロジスティックス・相川取締役(東京産業廃棄物協会、青年部長)、吉勝重建・矢野智孝社長(全国解体協会、理事)など、同業の産業廃棄物処理業者の経営者や社員たちも加わった。
なぜ彼らは、社員をサーフィンや田植えに行かせたのだろうか。最大の理由は、社員の意識改革だ。そもそも「産業廃棄物処理業」という仕事は、地球環境と直結している。「田植え」はもちろん、サーフィンも寄せ来る波を通じて、地球の鼓動を感じ取ることができる。
白井グループの白井徹社長の愛読書は『社員をサーフィンに行かせよう』(東洋経済新報社)。米アウトドア衣料製造販売のパタゴニアを創業したイヴォン・シュイナードによる自伝的経営書だ。この本は決してサーフィンやアウトドアスポーツのことだけが書いてあるのではなく、「ビジネスを通じて地球環境に責任を持つこと」が主題になっている。
弊誌「オルタナ」創刊号(2007年3月刊)で、そのイヴォンにインタビューした記事を掲載した。「社員をサーフィンに行かせる」本当の理由は全部で5つあるという。
(以下引用)
--第1に「責任感」です。今日サーフィンに行っても良いか、いつまでに仕事を終えなければならないか、いちいち上司にお伺いを立てるようではいけません。もしサーフィンに行くことで仕事が遅れたら、夜や週末に仕事をして、遅れを取り戻せば良いのです。そんな判断を社員ひとり一人が自分で出来るような組織を望んでいます。
--第2は「効率性」です。(中略)
--第3は「融通を効かせること」。(中略)
--第4は「協調性」です。パタゴニアには、「僕がこれからサーフィンに行っている間に取引先から電話があると思うので、受けておいてほしい」と誰かが頼むと、「ああいいよ、楽しんでおいで」といえる雰囲気があります。
--第5は「真剣なアスリートを多く雇うこと」(中略)
(引用終わり)
今回の研修でも、「社員をサーフィンに行かせる」ことで、責任感や協調性がある社員を育てたいという狙いがあったのだと思う。
もう一つの狙いは、産業廃棄物処理業界全体に対するグレーなイメージから脱却し、企業としてより良い人材を取り込むことであろう。