「1村1デザイナーの時代へ」、半農半X研究所代表語る

2015年4月に開設する龍谷大学農学部に就任予定の教授陣と塩見氏(写真右から2番目)
2015年4月に開設する龍谷大学農学部に就任予定の教授陣と塩見氏(写真右から2番目)

龍谷大学農学部(2015年度開設予定・設置認可申請中)が主催する「食の循環」をテーマにしたトークセッションが紀伊国屋書店グランフロント大阪店で開催された。ゲストに半農半X研究所代表、塩見直紀氏を迎え、龍谷大学農学部の就任予定教員と語り合った。塩見氏は環境問題や農業人口の減少を目の当たりにし、今から15年前に京都府綾部市にUターン。以降、持続可能な農業をベースに「半農半X(エックス=天職)」という生き方を提唱している。(オルタナS関西支局特派員=ヘメンディンガー綾)

農水省によると1960年、農業就業人口は約1400万人いたが、2014年では239万人に減少した。現在、日本の総人口のわずか2パーセントで、農業を支えていることになる。

しかもそのうち6割以上が65歳以上の高齢者だ。また農作物を育てる耕地面積の4割が、中山間地域と呼ばれる山あいに存在している。

ここでは大型機械を使った、大規模で効率の良い農業が難しい。どうしても人件費と手間がかかるため、価格の面で大量生産された輸入作物に勝てない。

国民一人ひとりが日本の農業を大切に思い、可能な限り食料を自給していく。八方塞がりの現状を打破するには、このような意識改革と行動が必要だ。

塩見氏は言う。「半農半Xの『農』は大規模な農業だけではなく、味噌づくりや野の花を生けるなど、ていねいな暮らし方そのものを含む。また都会に暮らす人でも、ベランダ菜園などで、小さな農を実践することができる。各自がそれぞれの地で、少しでも農ある暮らしを営むこと。そして自然に対する謙虚さを取り戻すことが必要」。

「ライフワークや好きなことを掛け合わせ、オリジナルの組み合わせをつくって下さい」と呼びかけた
「ライフワークや好きなことを掛け合わせ、オリジナルの組み合わせをつくって下さい」と呼びかけた

トークでは「消費者と農業人口の中間に位置する『農業配慮人口』をいかに増やすか」が論点となった。

植物生命学科に就任予定の古本強教授からは「小さな規模でもいいから、まずは土に触れることが大切。できれば学生全員が直接体験できる機会をカリキュラムの中で設けたい」との意見が出た。

食料農業システム学科に就任予定の香川文庸教授は「多くの人にとって憧れの職業になっていない。農業のイメージを一新するようなスター性が農家にも求められるのでは」と語る。

塩見氏は「情報が溢れる今日、時代に埋もれない戦略的な情報発信が大切。そのためには農家もホームページ作成や商品パッケージでデザイン力が不可欠」と主張した。

「デザイン」が地域を活性化させた例として、対馬市の地域おこし協力隊や、デザイナーの梅原真氏をあげた。「田舎でいちばん必要なのはデザイナーという職種。これからは『1村1デザイナー』の時代が来るのでは」と、ユニークな意見でトークを締めくくった。

トークセッションは全7回開催予定。第4回目の次回は7月26日、ゲストは体験農園事業などを手掛けるマイファームの西辻一真代表だ。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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