もっと自由に「箱の外」に飛び出そう

打開のための知恵があるわけではないが、実践者として一つアドバイスするとすれば、少し自由になって「箱の外へ」出てみることをお勧めしたい。例えば筆者が策定に関わったISO26000は、CSRの標準マニュアルのように思われているが、決して完璧なものではないし永遠の真理でもない。あくまでも現時点での世界のベストプラクティスに基づいて、取り組みのヒントを集大成したものだ。誤解を恐れずにいえば、標準化は有効な手段ではあるが、とらわれすぎるとイノベーションを妨げる。CSRは日進月歩。ぜひ、従順に従うだけではなく、原則をよく理解したうえで、批判的精神をもって活用してもらいたいと思っている。

昔話で恐縮だが、10年以上前のCSR レポート作成はまさに手づくりの家内工業、そして手探り状態だった。拠り所もないし何が正解かは誰にもわからない。コミュニケーション・ツールとして、誰に何をどう伝えるべきか、自分の頭で考え、試行錯誤を重ねるしか方法がなかった。それは苦しい作業ではあったが、同時に何か新しい課題にチャレンジする喜びがあった。当時は、同様にチャレンジをし、自己主張をする国内外他社の個性的なCSR レポートを読むのが実に楽しかった。当時のCSR レポートは、昨今のよく整ったレポートに比べると、荒削りで欠点だらけだったかもしれない。でも、個性が光り読者を引き付ける魅力があった。

現在の我々は、できあがった基準やツールに縛られ、ルーチン化した日常業務に埋没し、チャレンジ精神を失っていないだろうか? 手段が目的化したり、事の本質を見失ったりしていないだろうか? 自戒を含めて、問い直してみる必要があると感じる。

メジャー化したとはいえ、まだまだCSRは発展途上だ。チャレンジ精神が必要とされる。CSR担当者は、もっと自由に発想し、自己主張をしてもよいのではないか。常識を疑い、創造的破壊をしていく大胆さを持ってほしい。受動的に取り組んでいる限り、CSRは担当者にとって魅力的な仕事ではない。そして、CSR担当者が目を輝かせ生き生きと仕事をしていなければ、社内の共感を呼ぶことはできないし、経営者を動かすことも決してできないだろう。

【せき・まさお】2001 年から損保ジャパンでCSR の推進に携わる。2005 年から日本産業界代表エキスパートとしてISO26000 策定作業部会に参加。2013年より明治大学特任准教授。経団連CBCC(企業市民協議会)企画部会長、環境省・経済産業省・文部科学省の部会委員を務める。著書に『ISO26000 を読む』(日科技連)、共著に『会社員のためのCSR 経営入門』(第一法規)、『社会貢献によるビジネス・イノベーション』(丸善出版)などがある。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第5号(2013年2月5日発行)」から転載しました)

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