記事のポイント
- モンブランやアルマーニなど高級ブランドが人権侵害の批判に直面している
- 労働者らはモンブランの旗艦店前で「イタリア製はイタリアの恥」と訴えた
- 伊検察は、高級ブランドのサプライヤーでの人権問題の調査を進める
モンブランやアルマーニなどの高級ブランドが、サプライチェーンでの人権問題で批判に直面している。モンブランの元サプライヤーで働く移民労働者らは、「メイド・イン・イタリーはイタリアの恥」と訴えた。イタリア検察は、高級ブランドのサプライチェーン上の人権問題について調査を進めている。(オルタナ副編集長=北村佳代子)
労働者らは9月11日、スイス・ジュネーブにあるモンブランの旗艦店の前でデモを繰り広げた。その日は、モンブランの親会社のリシュモングループが、ジュネーブで株主総会を開催していた。
デモを起こした労働者らは、イタリアのトスカーナに拠点のある、中国資本のZプロダクションの従業員だ。Zプロダクションは、2023年初めまで、モンブランとの間に取引関係があった。
Zプロダクションをはじめとするトスカーナの皮革製造業界では、過去何年にもわたって、高級ブランド品の製造のために、不法移民の雇用と長時間にわたる過酷な労働が横行していたとロイターは報じた。移民労働者の多くは、皮革加工の経験もなかったという。
パキスタン出身の23歳の労働者は、「合法的な労働者のように週5日、1日8時間の労働を望むと、モンブランは取引を打ち切った。彼らはただ奴隷が欲しかっただけだ」とロイターに語った。
彼女はZプロダクションで、革製品にモンブランのロゴを貼り付ける仕事をしていた。Zプロダクションが2022年10月に労働条件を改善した矢先、モンブランとの取引が打ち切られた。
モンブランは、監査の結果、Zプロダクションがリシュモングループの定めるサプライヤー行動規範の基準を満たしていないことが判明したため、2023年に契約を打ち切る決定をしたと回答している。
サプライヤー側の劣悪な労働環境を裏付ける発言もロイターは紹介する。
2022年までZプロダクションで配送を担当していたイタリア人は、当時自分は唯一の正規雇用のイタリア人だったと述べ、中国、パキスタン、バングラデシュなどからの移民労働者らが長時間働かされていたという。
「トスカーナではよくあることだ。大手ブランドは、下請け業者に低コスト労働を押し付けている」と、彼はロイターに語った。
■ディオールやアルマーニの製造工場でも
■平均7000社と言われるサプライヤーの多さが実態把握を困難に