東京五輪を『三方よし』の「エシカル五輪」に--日本エシカル推進協議会が提言書

2.「エシカル五輪」の基本コンセプト

1)人と環境に優しいエシカル五輪
2020年の東京五輪を、同組織委員会が表明する「環境を優先した大会」とすることに加え、基本的な人権や社会的な影響にも配慮した、「人と環境に優しいエシカル五輪」とする。

2)エシカルな調達と運営
より具体的には、東京五輪に関わる全ての調達および運営(組織・大会)をエシカル化するとともに、その経験を五輪後の東京都ひいては日本全体の調達や運営にも活かす。
例えば、金、銀、銅メダルの原材料には東京都で回収した廃棄物からリサイクルした金、銀、銅を用いる、選手村で提供する多くの食品をフェアトレード、オーガニック、ASC認証製品等とする、選手のユニフォームはエシカルファッションユニフォームとするなどである。

3)エシカル・スタンダードの確立
調達および運営のエシカル化に加え、企業をはじめとするあらゆる組織がISO26000等に示された社会的責任の完遂を促進する「エシカル・スタンダード」をマルチ・ステークホルダー方式で策定・確立する。

4)エシカルな日本の伝統を活かす
オリンピックの基本哲学に立脚しつつ、日本社会が古(いにしえ)より受け継いできた倫理的・利他的価値観である「三方よし」をエシカル東京五輪に十全に活かし、発展させ、オリンピック史にレガシーとして残す。

5)社会的な絆の強化と伝承
東日本大震災を機に再認識された、弱い立場に立たされた人々への思いやりや社会的な「絆」を、エシカル五輪の実現によって一層強め、深めることによって、人にも環境にも優しい日本社会をレガシーとして将来世代に伝承する。

6)東京の「エシカルタウン」化と全国へのエシカル文化の普及
エシカル五輪に向けて東京を「エシカルタウン(エシカルなモデル都市)」化しつつ、東京への一極集中を避けるべく、日本全国にエシカルな生き方、エシカルタウン、エシカル文化を普及させる。

※「エシカル」と「三方よし」の定義:
「エシカル」に定まった定義はないが、一般に「人(社会)と環境に優しい」ないし「人や環境を思いやる」ことをもってエシカルとすることが多く、本提案書もその立場に立つ。

日本の「もったいない」は環境への配慮ないし環境との調和を、「おもてなし」は客人への配慮を一般的に意味する。「三方よし」は、江戸時代より近江商人が重んじてきた商業倫理で、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という他者や社会に配慮した倫理的な商いのことを指す。

ただし、本提案書において「三方よし」は、従来の意味を超えて、経済合理性/効率性だけでなく社会および環境への影響にも十分に配慮した、「経済よし、社会よし、環境よし」をもって「三方よし」とし、「エシカル」と同義とする。「三方よし」の中には、環境や客人への配慮を意味する「もったいない」および「おもてなし」の精神も含まれる。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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