3週間で42億円集めた「アイスバケツ」、日本の寄付文化も変えるか

当初は仲間うちで始まったが、その輪はぐんぐん広がり、オバマ大統領をはじめ、ビル・ゲイツ氏やクリスティアーノ・ロナウド選手、レディ・ガガさんら有名人にもメッセージが届いた。実際には氷水をかぶった上で寄付した人も多く、8月21日までの約3週間で4180万ドル(約42億円)という巨額が集まった。

影響力の高いセレブリティが参加したことで、瞬く間に世界中に「ALS」という難病が知れ渡った。日本でも、ソフトバンクの孫正義社長やトヨタ自動車の豊田章男社長、横浜FCの三浦和良選手、歌手の浜崎あゆみさんらが氷水をかぶった。その様子を伝える動画が、フェイスブック上でシェアされ、日本でも急速に広がっている。

以前から、日本では寄付文化やチャリティー活動が根付きにくいとされてきた。実際、日本の年間寄付金額は1兆2350億円(2011年)と、世界トップの米国(約23兆8736億円、同)に比べて約20分の1に過ぎない。

その背景として、日本では、震災復興は例外として、社会問題や政治問題に公然と関わる有名人が多くないことも一つの理由とされる。社会的な発言をすることで、ファンが減ったり、芸能生命に影響を及ぼすことを恐れるためだとされる。しかし今回のALSキャンペーンは、そんな「心の壁」を見事に取り払った。

児童労働問題に取り組む認定NPO法人ACE(エース、東京・台東)の岩附由香代表は「日本の有名人も、最近では社会問題を受け入れるようになってきた」と話す。事実、2013年3月には、化粧品の動物実験反対のシンポジウムに女優の杉本彩さんが出演し、話題を呼んだこともある。

一方、ネット上では「単に氷水を被ることをステータスにしている」「ただ遊んでいるだけのように見える」と、キャンペーンそのものを疑問視する日本人からの声もある。この批判に対して、岩附代表は「議論が出ることは良いこと」と話す。意識啓発のキャンペーンでは、話題を喚起することに意味があるからだ。

芸能人に対してはさらに厳しく「偽善」「売名」と批判する声も出る。これについて佐藤代表理事は、「偽善、売名で何が悪いのかと言いたい。やりたくない人はやらなければいいだけ。そのような批判は一切気にすることはない」と言い切る。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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