3週間で42億円集めた「アイスバケツ」、日本の寄付文化も変えるか

今回のキャンペーンで、日本ではこれまで日本ALS協会(東京・千代田)に250人が200万円を、END ALS(東京・世田谷)には169人が138万円(8月22日現在)を寄付した。この額を多いと見るか、少ないと見れば良いのだろうか。

日本に「寄付文化」を根付かせようと活動する日本ファンドレイジング協会の鵜尾雅隆代表理事は「『ファンドレイジング』(資金集め)は、共感の輪を広げることが目的。その結果、寄付につながる。集まった金額だけでは成果を評価できない」と話す。

「日本では『お金を下さい』とは言いづらい。それを『氷水』を使って、楽しくチャリティーにつなげたことに大きな意味がある。一度、体験することで、次は自分が何かをやってみたいと思う人が現れることを期待したい」(鵜尾代表理事)

コモンズ投信の渋沢健会長は、「米国から広がったこの『お祭り騒ぎ』で、ALSという重い病について認知度が高まった。SNSを通じてシェアされ、広がっていく可能性を感じた」と話す。

一方、渋沢会長は、「アイスバケツ・チャレンジに限らず、日本人は盛り上がっても、一過性ですぐ平常に戻ってしまう。ブームが去った後、どれだけ土壌ができているか」と疑問を投げかける。

渋沢会長自身も8月21日、アイスバケツにチャレンジ。「『氷水』をかぶることで、リアルに『目が覚めた』。同じように、このキャンペーンで『目覚めた人』は多いはず」という。

タレントの武井壮さんは「思うところあって氷水はかぶりませんが、このキャンペーンで多くの人がALSを知り、多額の寄付が集まった事は素晴らしいと思います。これを世界に広めた著名人の皆様や寄付及び参加された皆様の行動に敬意を表したいと思います」とツイッターで表明した。

今回の「ALSアイスバケツ・チャレンジ」は、日本の多くのNPO関係者や非営利団体の関係者にとって、寄付集めでの「黒船」だったかも知れない。

日本人全体としては、まだ「楽しみながらチャリティ」を楽しめる域には達していない。だが、日本の芸能人や企業トップでこうした「遊び心」を受け入れる人が多いことも分かった。

今後、日本のファンドレイジングや寄付集めで、どんな面白いアイデアが出てくるか。行き過ぎたアイデアが出て、反発を買うこともあるかもしれないが、「共感の輪」は今後も広がっていきそうだ。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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