■時価総額1000億円以下のプライム企業が直面するサステナ情報開示の課題③
記事のポイント
- EUのサステナ情報開示指令CSRD/ESRSはESGに関する幅広い開示を求める
- 社内リソースが乏しい中小上場企業はCSRD/ESRSにどう対応すべきか
- まだほとんど検討していない企業がまずやるべきこととして3点を紹介する
筆者は、サステナビリティ情報の開示支援を専門とするコンサルタントです。時価総額が比較的小さいプライム企業において、「サステナビリティ情報開示に対応する社内リソースが不足し、コンサルタントも確保できない」といった問題が今後深刻化する可能性が高いと感じています。この課題を微力ながら解決したく筆をとらせて頂いています。今回は、中小の上場企業の担当者向けに、CSRD/ESRSへの対応方法を説明します。(有川 誠一)
前回記事で、「自分の会社はいつからサステナビリティ情報開示が義務化されるのか?」をまず抑えるよう提案させて頂きました。
抑えるべきポイントは2点です。1点目は、我が国のサステナビリティ開示基準について時価総額5000億円未満の会社は2030年3月期以降に義務化の見込みですので、少なくとも我が国のサステナビリティ開示基準が最終化される来年3月までは動かないのが得策です。
2点目は、海外でのサステナビリティ開示基準が近いうちに適用義務化されないか注意することです。例えばEUのサステナビリティ情報開示基準(以下、CSRD/ESRS)は2025年12月期から多くのEU域内日経企業子会社に適用されるため、至急抑える必要があります。
今回は2025年12月期に適用が始まるCSRD/ESRSについてほとんど検討されていない会社向けに、まずやるべきこととして、3点をお伝えします。
■自社のEU子会社が適用対象か確認を
最初に確認すべきは、自社のEU子会社がCSRD/ESRSの適用対象かどうかです。CSRD/ESRSは、従業員数250人以上、売上高50百万ユーロ超、総資産25百万ユーロ超のうち、2つ以上の要件を満たす企業に適用されます。
これらの基準をもとに、自社が適用対象かどうかを早急に確認してください。さらに、EU子会社が孫会社を持つ場合、たとえ孫会社がEU域外にあっても、EU内の子会社と連結した情報で適用対象となるか判断する必要があります。
適用対象企業は、準備の遅れが許されないため、今すぐ対応を始めるべきです。詳細はこちらをご覧ください。
■CSRD/ESRSは最大1000項目以上の開示求める
次に、CSRD/ESRSの概況を把握することが必要です。従来の財務報告とは異なり、環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する幅広い情報開示が求められます。
業界別に異なる開示項目が設定される予定であり、最大で1000を超える開示項目(Disclosure Point)が存在します。これに対応するためには、データの収集体制を整えるとともに、システムの導入が必要になる場合もあります。詳細はこちらをご覧ください。
■早めに第三者保証への対応を
最後に、自社およびEU子会社を担当する財務諸表監査人に相談することを強くお勧めします。監査人は、CSRD/ESRSに関する最新の知識を持っており、企業がどのように準備すべきか助言してくれるでしょう。
なおBig4監査法人以外の監査人と契約している場合、CSRD/ESRSに関する知見が監査人に不足しているケースもありうるため、必要に応じてBig4に見積もりを依頼することも検討すべきです。加えてサステナビリティ情報は第三者保証が求められるため、早めに保証人を決める準備も重要です。
CSRD/ESRSに基づくサステナビリティ情報開示は、上場非上場問わず日本の会社にとって盲点であり、避けては通れない課題です。自社が適用対象であるか、そしてどのような準備が必要かを早期に把握し、対応することが成功の鍵です。
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