[CSR]宮城・蔵王の牛乳使用、神戸発チーズケーキで復興支援

――「本業を通して取り組む復興支援」とのことですが、何か特別な思いなどあったのでしょうか。

日本でもCSRに取り組む企業は増えてきましたが、会社の事業とCSR活動とがリンクしていないところも多いと感じていました。ですから、「なるほどアンリやシーキューブ(C3)らしいね」と言われることをしたいと思ったのです。

当社シュゼットは、1969年に神戸芦屋で創業しました。1997年には阪神淡路大震災を経験しています。店舗や工場に被害を受け、一時流通もストップしました。

その時に、全国、そして東北の人に助けてもらい、無事回復できた経緯もあります。ですから、東北の復興支援は恩返しでもあるのです。

また、私自身も阪神淡路大震災の被災者で、時間とともに減っていくボランティアや、人々の意識が離れていく様子を見て、傷ついた経験があります。同じ思いを東北の被災者にさせてはいけないと思い、まずは10年やり抜こうと決めました。

こうした「ストーリー」を社内で共有することで、東北の復興支援への道筋が自然に見えてきました。

自分に何ができるか考えた時に、自分たちの強みである「お菓子」や、被災したときに得た教訓を生かさないといけないな、と思いました。プロジェクトとしても「志」の部分が共有できたことで、ブレずに進めることができたと考えています。

■「ストーリー」によって、原点回帰

――「ストーリー」を共有したことで、何か効果などありましたか。

東北をイメージしデザインされた「スマイルフォー東北フロム芦屋」のパッケージと新商品ケーク・フロマージュ
東北をイメージしデザインされた「スマイルフォー東北フロム芦屋」のパッケージと新商品ケーク・フロマージュ

ストーリーを立てたことで、この復興支援に限らず取捨選択ができるようになりました。

実はかつて、方針を誤って「流行」に合わせすぎようとして、本業を見失ってしまった時期があります。当時、業績も下がっていました。マドレーヌやフィナンシェといった定番商品をないがしろにして、既存の顧客へのアプローチも不十分でした。

自分の強みを生かしてお菓子を作り、人々を驚かせる。定番商品もよく見直して、自分に今できることをする。復興を通してこの原点に立ち返ったことで、自分たちを見つめ直すことができました。

また、「スマイルフォー東北」としても、今年から調理師学校の奨学金を始めましたが、基本はお菓子を柱にしていくつもりです。何より「無理なく」と思っています。続けるためには、ビジネスとしてきちんと成功し続けることも必要です。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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