ただし、ACGAの調査の推移をみると、2007年から2012年の5年間に、11カ国中7カ国でスコア改善が見られます。これにはメディアやNGOなど第三者からの働きかけや、ESGに関する情報開示を求める上場規制が功奏していると考えられます。

シンガポールでは、メディアが取締役就任状況を監視・公表したり、金融管理局がCGの新しい行動規範を作ったり、証券取引所がサステナビリティ報告ガイドラインを公表したりしています。香港では、CGに焦点を当てて活動しているNGOが、取締役の血縁状況、独立性などについて調査・発表しているほか、証券取引所がESG報告を促すガイドラインを策定しています。これらの取り組みにより、1人が複数の会社の取締役を兼任することが減るなどの改善が見られます。

インドネシア証券取引所でも、SRI指標を作成したり、エネルギー消費量の多い企業向けに省エネの取り組みについて報告を求めたりしています。マレーシア証券取引所でも、サステナビリティに関するガイダンスを作成したほか、上場企業向けのサステナビリティ指標を今後導入する予定です。

こうして情報開示が進み、データが蓄積されていくと、CSRの進捗を評価できるようになります。

本報告を受けて行われた、ライオン氏、沖田憲文氏(味の素株式会社)、荻野博司氏(株式会社朝日新聞社/NPO法人日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)、谷本寛治教授(早稲田大学)によるパネルディスカッションでは、参加者も交え、次のような議論が行われました。

本社が日本にあっても、アジアの国々で上場している場合は、現地の規制に沿って統治し、現地の言語で書かれたレポートを以て情報開示を行う必要があること。CGの定義としては、株主総会・取締役会・監査による上場株式会社統治、という狭義から、上場/非上場に関わらず株主・投資家への責任プラス、ステイクホルダーへの責任まで広げた、社会における企業の役割・責任、という広義で捉えるべきではないか、ということなど。

本シンポジウムでは、味の素株式会社のアジアでの取り組みも報告されましたので、次回はその内容を紹介します。

【さいとう・のりこ】原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学専任講師。jfbs

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第7号(2013年4月5日発行)から転載しました)

齊藤 紀子氏の連載は毎月発行のCSR担当者向けのニュースレター「CSRmonthly」でお読みいただけます。詳しくはこちら

1 2