CSR とコーポレート・ガバナンス:続編【企業と社会の関係】

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム(JFBS)事務局長)

前回に引き続き、JFBS が3月5日に開催したシンポジム「CSRとコーポレート・ガバナンス:アジアにおける日本企業の取り組み」(共催:CSRアジア、協力:日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)における報告内容を紹介致します。沖田憲文氏(味の素株式会社CSR部部長)から、「現地化(Localization)から土着化(Nativization:同社による造語)へ」をキーワードとして、同社のアジアでの取り組みが報告されました。

味の素が目指す「土着化」

味の素は、26カ国に105工場を有し、130カ国・地域で製品を販売、売上高一兆円を超えるグローバル企業です。2009年に100 周年を迎えて経営理念の見直しが行われ、「地球的な視野にたち、食と健康そして、いのちのために働き、明日のより良い生活に貢献します」が味の素グループ理念に掲げられました。同社が開発・製造してきた「うまみ」物質(アミノ酸)を以て、21世紀の人類課題である①地球持続性、②食資源、③健康な生活、に貢献することを基本的哲学としています。そして①食、②バイオファイン、③医薬・健康、を柱として、基本的哲学を具現化するための事業を行っています。

アジアにおける展開は、1958年の味の素フィリピン設立を契機に本格化しました。長らく、低所得者層向けに小袋化した「味の素」の販売を行っていますが、その根底には、いつでもどこでも安定価格で提供することを目指した3つのA(Affordable,Applicable, Available)アプローチがあります。いわゆるBOP層も顧客として包摂していくことを重視しています。

そして、途上国で生産して先進国で売るというモデルではなく、現地で開発から生産・販売まで一貫して実施することも重視しています。その際のキーワードが「土着化」です。

現地で調達可能な原材料から、現地のニーズに合った商品を開発し、現地に合った方法で販売する?という流れを、環境負荷を極小化する為の循環型サイクルを構築して実施しています。それには、現地の言語を話し、農・林・水産事業者やサプライヤー、小売店とコミュニケーションをとること、現地の人々の価値観や食文化をよく理解することは必要不可欠です。そして現地の開発・生産力を高めるために、現地会社において企業理念が共有され、現地社員が動機付けられる環境づくりも必要です。その取り組みの一つとして、2015 年までに役員比率の半分を現地の人にする、ということを目標としています(タイではすでに達成済みとのこと)。

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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