CSR とコーポレート・ガバナンス【企業と社会の関係】

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム(JFBS)事務局長)

2013年3月5日、JFBSは「CSRとコーポレート・ガバナンス:アジアにおける日本企業の取り組み」をテーマとするシンポジウムを早稲田大学で開催しました(共催:CSRアジア、協力:日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)。グローバル展開している日本企業が、特にアジア地域において、どのようにCSR経営(環境経営、人事、人権問題、サプライチェーン管理など)を機能させているか/させようとしているか。さらにこうした経営課題に対して、本社および現地法人などはどのように統治しているか、について考える場となりました。

冒頭に行われた、エリン・ライオン氏(CSRアジアエグゼクティブ・ディレクター)による、アジアにおけるコーポレート・ガバナンス(以下、CG)の現状についての報告内容を以下に紹介致します。

アジアにおけるCG の現状

アジア・コーポレート・ガバナンス協会(ACGA)は、アジア各国におけるCGにつきESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から調査・評価しています。「CG のルールと実践」「法律による強制力」「政治的・規制上の働きかけ」「監査基準」「CGの文化醸成」の5項目についてスコアを算出しており、2012年の調査結果では、日本を含む11カ国中、シンガポールが1位、香港がそれに続きました(日本は4位)。現状、最高スコアでも69点であり、今後は80 点を目標にするようACGAは働きかけています。

アジアの企業にとって最大の問題は取締役の独立性です。アジアでは多くの株主が政府や同族会社であり、独立した取締役がいないと「株主からの声」が経営に反映されません。必要条件をクリアできる企業は少なく、利益相反がおきる可能性が高いことが問題になっています。アナリストは財政面分析のみに焦点を当て、CSRの側面について分析・公表しないため、企業は機関投資家からの声を聞く必要にも迫られていないのです。CSRとCGを問うグローバルな潮流があっても、アジアでは政府も力を入れていないのが現状です。

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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