さらに、この数値は九州と本州との間につながっている地域間連系線を利用しない場合であり、今現在も利用可能である259万kWに及ぶ九州電力と中国電力との間の送電容量を利用すれば、余剰日数は最大でも1日(1時間)のみとなる。また、地域間連系線を通常は利用していない部分まで活用すれば556万kWになり、その場合、たとえ川内原発を稼動させた場合でも余剰が起きる日数はゼロになる。
◆「余剰を生んではならない」から「余剰をどう活かすか」へ
WWFジャパンエネルギープロジェクトリーダーの小西雅子氏は、そうしたデータを元に、「日本にある既存のインフラは自然エネルギーを大量導入している欧州と比べても見劣りはしない規模があるのだが、非常時以外は使わないというこれまでの前提に基づいて運用しているため自然エネルギーの変動を吸収できない分析結果につながってしまう」と語る。
さらに自然エネルギーが変動するという点についても太陽光や風力の変動は予測しやすいものであり、対策が立てやすいことに言及。「気象予測システムを強化すれば、変動は予測できる」と言う。
実際に風力発電を大量導入したスペインでは予測精度を年々上げていて、2014年現在では誤差が3%程度の所まで来ている。日本の電力の需要予測の精度が3%くらいといわれているので、同じくらいのレベルだ。つまり、変動するエネルギー源を活かすには余剰電力が出るから止めるというこれまでの考え方ではなく、それをどのようにうまく活用していくのかと発想を切り替えていくことが大事になる。
今回の分析を行ったシステム技術研究所の槌屋治紀所長も、自然エネルギーを大量導入する社会では、場合によっては電力が余ってしまうケースが出てくることは当然と想定して来た。
そこで、地域間連系線の活用のほか、揚水発電の蓄電池としての利用や電気自動車の導入なども提言している。
槌屋所長は「今の段階では実際には太陽光が272万kW、風力は43万kWしか稼動していません。1260万KWに到達するまでにまだまだ何年もかかると考えられます。建設的な方針が打ち出されれば十分に解決可能な問題なのです」と語った。