記事のポイント
- 独VW社が中国・新疆ウイグル自治区の工場を手放した
- 同社は、同地区でウイグル人を強制労働させているとの批判を受けていた
- 独VW社は「経済的な理由から」だと説明する
独フォルクスワーゲン(VW)社は11月27日、同社が中国・上海汽車(SAIC)との合弁で運営してきた新疆ウイグル自治区の工場の売却を発表した。同社は「経済的な理由から」だと説明するが、同地区ではウイグル人の強制労働などの人権問題を指摘されていた。(オルタナ副編集長=北村佳代子)
独VW社は、新疆ウイグル自治区のウルムチ市の工場のほか、同自治区トルファン市と上海の安亭(アンティン)にある自動車テストコースも売却する。売却先は、国有企業の上海臨港経済発展集団の子会社・上海汽車車両検査認証(SMVIC)だ。
自動車メーカーによるウイグル人の強制労働については、以前から国際人権NGOなどが指摘してきた。VWグループに関しては今年、米ウイグル強制労働防止法(UFLPA)に基づき、同社グループの自動車数千台が米国の港で輸入差し止めとなっている。
(参考記事:米がVW車の輸入差し止め、ウイグル人強制労働の疑い)
投資家や人権団体は長年、同社に対し、新疆ウイグル自治区での事業撤退を求めてきた。一方で、VW社の中国合弁パートナーである上海汽車(SAIC)は、新疆ウイグル自治区の工場売却に反対していた。
VW社は2023年、強制労働の疑惑排除のための監査も実施した。しかし英フィナンシャル・タイムズ紙は今年、同社の監査が、国際基準を満たしていないと報じた。
同紙は、今回のVW社の撤退発表を受け、VW社の株主であるユニオン・インベストメント社のウェルニングESG資本市場部門責任者の、(今回の決定は)「遅すぎるが当然だ。VW社の不十分なガバナナンスは依然弱点だ」との言葉も報じた。
一方、VW社は今回の売却を「経済的な理由」だと説明する。
VW社にとって中国は最大市場だ。中国でのEVシフトが加速する中で、VW社の市場シェアはここ5年でほぼ半減となる12%にまで落ち込んだ。
最大市場・中国での不振は、同社がドイツ国内の工場閉鎖を検討する大きな要因の一つとなっている。VW社は9月、ドイツ国内の6つの工場の閉鎖・縮小を検討することを明らかにした。工場閉鎖が実現すれば、1937年の創業以来初となり、数万人の雇用にも影響が出る。