揺らぐESG、確固たる価値観に基づくサステナ経営を

記事のポイント


  1. COP29での気候変動対策の資金目標の合意形成は最後まで難航した
  2. 欧米では気候変動を含むESG全般に対する反発が広がりを見せている
  3. 企業には確固たる価値観に基づくサステナビリティ経営が求められている

11月24日に閉幕した第29回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29)では、焦点となっていた気候ファイナンスについての合意形成が難航しました。背景には、気候変動に懐疑的でパリ協定からの再離脱を公約しているトランプ次期米大統領の存在が影響したとの見方もあります。いま欧州や米国では気候変動だけでなくESG全般への逆風が吹いています。そのような時代だからこそ、企業は長期視点に立ち、確固たる価値観に基づくサステナビリティ経営の推進を通して、持続的な社会の発展に貢献していく姿勢が問われています。(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家=遠藤 直見)

■COP29の最優先課題は気候ファイナンス、合意形成は難航した

COP29が、11月11日から24日まで、アゼルバイジャンの首都バクーで開催されました。COP(Conference of the Parties)は、気候変動についての国際的な合意形成を目的とする会議で、約200カ国・地域が参加します。

今回の主要な議題は「気候ファイナンス」です。途上国の気候変動対策(緩和策と適応策など)を支援するための2025年以降の新たな資金目標が議論されました。

2009年のCOP15では、先進国が毎年1000億ドルを途上国に提供する目標が設定されました。この目標の期限は2020年でしたが、経済協力開発機構(OECD)によれば、実際に目標額が初めて達成されたのは2022年でした。

途上国は、再生可能エネルギーの普及促進や防災インフラの整備などに多額の資金を必要としています。そのため年1000億ドルを大幅に上回る年1兆ドル以上の拠出を先進国に求めました。

これに対し、先進国は大幅な増額に慎重である上、中国や産油国なども資金拠出に参加すべきだとして、途上国側との間で意見の隔たりが続き、会期は2日間延長されました。

最終的に、主に先進国の公的資金で2035年までに少なくとも年3000億ドルの途上国支援を実施し、官民の他の財源も総動員して少なくとも年1.3兆ドルを目指す案を採択しました。

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遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

東北大学理学部数学科卒。NECでソフトウェア開発、品質企画・推進部門を経て、CSR/サステナビリティ推進業務全般を担当。国際社会経済研究所(NECのシンクタンク系グループ企業)の主幹研究員としてサステナビリティ経営の調査・研究に従事。現在はフリーランスのサステナビリティ経営研究家として「日本企業の持続可能な経営のあるべき姿」についての調査・研究に従事。オルタナ編集委員

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