フランスのエコプロ展を見に行った。[小林 光]

個々の出し物の様子、質

では、実際に見て回った印象はどうだったろうか。

まず気が付くことは、全体としてゆったりとした展示である点である。自動車などでは、実物が多数展示されていて、日本では見られない大きな廃棄物収集輸送トラックや、雪からごみまで路面を清掃して回る比較的に小形の車両も実にたくさん展示されていた。実物の展示は日本より多い一方、パネルの類は少なかったし、あっても、日本のように字がぎっしりというものではなかった。

会場風景
会場風景
会場風景
会場風景

見て回る参観者は、ビジネスマン風がほとんどで、日本のように学生団体は見られなかった。ちなみに参観者数は、6万5000人と、我が国の半分程度である。他方、派手な制服に身を包んだコンパニオンの美しいお嬢さん方はいず、全体として実務的、商談会的な雰囲気であった。

個々の会場でも、係員とお客さんが個別に話せる小テーブルなどを多く配置していて、一方的、画一的な情報提供というよりは個別的・双方向的な応対を重視しているようであった。

その他、日本で考えられているよりもエコ・ビジネス、エコ・テクノロジーの範囲が広くとらえられていて、それが、幅広い出展につながっているのかな、とも思われた。論者が冒頭に述べたように、ビジネスが必ず持つ環境側面を改善すれば、それが即、環境ビジネスなのであって、日本でも、そうした観点での出店企業の拡大はあるのではなかろうか。

日本と決定的に違う点もいくつかあった。
一つは、些末であるが、個々の出展スペースでは、飲食がOKであった。商談風の議論をしながら、ワインやシャンパンも出され、カナッペ、チーズ、そして日本のお寿司風の小さなおつまみ類が用意されていた。文化なのか、お客様を簡単にはスペースから出ていかせない智慧なのか、定かではなかった。

国際色も強かった。ほとんどの出展者はヨーロッパ各地に本拠を持つ企業で、英語でのブロシュワーも多かった。それに加え、日本、韓国、中国の企業出展もあった。

我が日本は、NEDOがリヨンとの共同のスマートシティづくりを、日本よりは少しゆったりと見せていたほか、JETROが、いくつかの企業を集めたスペースを、これは全く日本風に作っていた。

これに加え、いすずやニッサンと言った個別の大企業による展示もあった。日本のプレゼンスはそこそこにあるように見えた。一つ工夫を感じたのは、途上国招待スペースで、今年はコート・ディヴォワールが展示のスペースを設けていた。ヨーロッパの企業に対して、商売の機会を提供するのが狙いであるようにお見受けした。そのほか、サウジアラビアも国別展示を行っていた。

日本としては、外国企業にも今より多く参加してもらうとともに、アジアの国々、例えば、ミャンマーなりベトナムなりのコーナーを設けて、エコ・ビジネスの具体化の芽だしの場にもなるような仕掛けもあるのかな、と思われた。

hikaru

小林 光(東大先端科学技術研究センター研究顧問)

1949年、東京生まれ。73年、慶應義塾大学経済学部を卒業し、環境庁入庁。環境管理局長、地球環境局長、事務次官を歴任し、2011年退官。以降、慶應SFCや東大駒場、米国ノースセントラル・カレッジなどで教鞭を執る。社会人として、東大都市工学科修了、工学博士。上場企業の社外取締役やエコ賃貸施主として経営にも携わる

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