もう一つの民主主義を、「企業レポート」で育てる3つのアイデア[中畑 陽一]

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突然ですが、あなたは何のために選挙に行きますか? 政治が変わると生活が変わるからでしょうか。民主主義の要だからでしょうか。そうだとするなら、生活に絶大な影響を及ぼす「もう一つのシステム」にも主体的に関わる選択肢もあるかもしれません。(IR・CSRディレクター=中畑 陽一)

そうです、「企業」です。特に大企業の売上高は今や国のGDPランキングの上位に来るほどの経済的インパクトを持っています。グローバル資本主義下における市民は、国だけでなく企業活動にも目を光らせ、参画すべき時代と言えませんか? ここでは「企業レポート」の役割を民主的に、と言ってもあまり力まず無理のない範囲で加速させるための案をまとめてみました。

■ 企業レポートとステークホルダー

ここで言う企業レポートとは、主に上場企業が年次で発行している、アニュアルレポートやCSR(サステナビリティ)レポートといった発行物のことで、企業のWEBサイトで閲覧が可能です。

アニュアルレポートには主に投資家向けに経営戦略や財務情報等が掲載されています。CSRレポートには、企業が社会的責任を果たすための環境・社会・ガバナンスなどのESG情報等が掲載されています。誰しも聞いたことがあるほどの大企業であれば、およそ発行していると思います。

これらのレポートは日本再興戦略における投資家と企業のコミュニケーション促進への動きや、昨今の世界的なサステナビリティへの関心の高まりにより注目度が高まっているものの、さらなる影響力の強化が必要と考えられます。(実際に冊子を取り寄せたい方は「エコほっとライン」を検索してみてください。)

あなたの生活に深くかかわっている企業、例えばあなたが働いていたり家族や友人が働いている企業、よく購入している商品を売っていたり、作っている企業、工場が近くにある企業などがあると思います。

その場合、企業からすればあなたが「ステークホルダー(企業の影響を受けている人)」と言う事になります。企業は今、ステークホルダーの意見を包摂しながら経営をしていくことが求められており、このアイデアが効果を発揮しやすい環境が整ってきていると思われます。それでは具体的な企業との関わり方を3つお伝えします。

1 企業レポートを読んで意見する

関わりの深い企業のレポートを取り寄せるか、WEBで開くかしたら、注意深く、かつワクワクしながら読み進めましょう。しかめっ面をしないと読めないものも多いですが、最近は表現力に富んだわかりやすいレポートも増えてきました。

モスバーガーのコミュニケーションレポートは店舗でお客が読むことを想定していますし、富士ゼロックスのサステナビリティレポートは重要課題をストーリー調にまとめてあり読み応えがあります。政党の選挙公約よりは楽しく読めるのではないでしょうか。さて、根気強く読み終えたら感じたことや考えたこと、企業と社会がより良くなるためのアイデアや懸念事項を企業に伝えましょう。

アンケート用紙が挟まれているなど、連絡先が記されているはずですが、わからない場合は、企業の代表メールでもいいでしょう。この記事を読まれている殊勝な方は、何かしらサステナビリティやビジネスに造詣の深い方と思われますので、それぞれの知見をフィードバックされるだけでも見事なプロボノではないでしょうか!?

なお、発行していない場合は、発行するよう意見する必要があります。特に非上場企業は法的な定めのある情報開示が限られるため、大企業であっても開示に消極的な企業が多いですが、非上場とは言え株主・投資家以外のステークホルダーへの影響は上場企業と変わらないはずであり、CSRレポートの発行が期待されます。

2 企業評価を伝える

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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