孤独死問題、世界的に深刻化――新春公開映画「おみおくりの作法」テーマにシンポ

誰にも看取られずに亡くなる「孤独死」。日本では年間約3万人が孤独死していると言われるが、実は海外でも孤独死は社会問題化していた。英国では、自治体の民生係が孤独死した人の葬儀や、墓の手配を行なっている。孤独死問題がテーマの映画が1月に公開されるのを機に、都内でシンポジウムが開かれた。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

■孤独死の葬儀と埋葬、行政が担う英国

映画「おみおくりの作法」(ウベルト・パゾリーニ監督/2013年イギリス・イタリア合作/91分)は、ロンドン市で働く民生係の視点で、社会が直面する孤独死の問題を描く。

映画「おみおくりの作法」より (c) Exponential (Still Life) Limited 2012
映画「おみおくりの作法」より (c) Exponential (Still Life) Limited 2012

ロンドン市で民生係として働くジョン・メイ(エディ・マーサン)の仕事は、孤独死した人を弔うこと。残された遺品を手がかりに故人の宗教や人間関係を調査し、故人にふさわしい様式で葬儀や埋葬を手配する。そして知人や親族が見つかれば、参列するよう働きかける。

彼の仕事は几帳面で実直だ。そのため、上司から「コストがかかりすぎる」とクビを宣告されることに。後任の女性は、何人分もの遺灰を墓穴に無造作に投げ込む。その様子を苦々しく眺める主人公――。

18日、都内で作品試写会後に開かれたシンポジウムでは、孤独死問題や地域づくりに取り組む有識者が登壇した。

シンポジウムの様子=18日、都内で
シンポジウムの様子=18日、都内で

『孤独死のリアル』(講談社刊)の著者で淑徳大学教授の結城康博氏は「孤独死問題は世界的に深刻化している」と指摘。

さらに「看取られて亡くなる場合でも、葬儀を省いた『直葬』が増えている。人の存在が尊重されず、希薄化している」「経済効率を重視する点では、日本社会の傾向は主人公の上司に近い」と人の死をめぐる社会状況を分析した。

その上で「一人暮らしの人口は600万人に達している。孤独死は仕方ないが、死者の尊厳が保てる地域社会を作る必要がある」と説いた。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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