『真実の瞬間』が指していた「真実」とは何か。パリ、ロンドンで考えました。[三浦 光仁]

それは言葉だけでなく、声のトーンに現れていて、その丁寧な言い回しだけでなく、心からそう思って話していることが伝わってきます。それはロンドンのタクシー運転手たちのプロフェッショナルぶりを遥かに上回っています。

旅で出会った人の一言が、その時の声のトーンがその街の、その国の印象を決めてしまうくらいですから、私たちは、いつもそのことに留意しなければならないと思います。

随分前に『真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか』(ヤン・カールソン著)というビジネス本が注目されました。その中で、顧客満足度が決定する「真実の瞬間」はほんの一瞬であり、それは企業の一員と顧客とのコミュニケーションの際にしばしば行われる、と述べています。

いったい、何を真実と指すのでしょう?何がそこに現れ、露わになり、何がわかるのでしょう?私は、今行っている仕事に対しての「誇りと感謝」が現れるのだと思います。この誇りと感謝が表れる瞬間が「真実の瞬間」となるのではないでしょうか。

アインシュタインは「なぜ人間は生きているのでしょう?」という質問に対して「互いに役立つために」と即答しています。

どんな業務であれ、自分が行っている仕事に対して誇りを持っていれば、どの瞬間にも精一杯心をこめて最善をつくそうと真剣に働きます。手を抜くような、いい加減なことはできません。ましてや、お客様とコミュニケーションを取っている瞬間は何にも増して大切な時間のはずです。

それは、お客様が何を望んでいるのか、何を喜びと感じて頂けるのか、少しも聞き逃すことなく、耳を傾けたい瞬間です。そしてお役立ていただける自分の持っているものを真剣に捧げるのです。

その集中力が「真実」を表していると思います。そしてそこに現れてくる音色、トーンの違いこそ「感謝」の気持ちだと思います。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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