もとより、開発行為を一概に否定するつもりは毛頭ないが、以前はオオタカの存在に象徴される豊かな生態系、生物多様性等を理由に保全されていた自然環境が、遠く離れた大都市近郊に、人間社会に順応して分布を広げたオオタカがいるからといって、破壊されてしまうことがあっては、環境アセスメントの趣旨を損なうことになる。
■密猟への影響
かつて、オオタカの減少に大きな影響を与え続けた要素として、雛を狙う密猟があった。なぜ雛が密猟されるか。大きな理由は、ワシ、タカなど猛禽類の剥製には高価な置物・装飾品としての需要があり、雛の成長後、剥製にして売れば、数十万円の価格がつくこともあるからである。剥製の売買自体の是非をここで論議するつもりはないが、希少種から外れる場合であっても、密猟に対する心理的抑制や監視の目が緩んでしまわないよう、留意すべきと考える。
今年(2015年)2月にも、40代の男性が、絶滅危惧種の猛禽、クマタカの剥製を、インターネットオークションに出品し、種の保存法違反で書類送検されている。当初設定した最低価格は25万円(その後10万円に値引き)だったとのこと。買手がつく前に摘発されたようだが、今現在も猛禽類の剥製に数十万円の価格をつけることがある、という事実が改めて現実に示された。
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猛禽類の剥製というと、私には常に思い起こされることがある。旧聞に属することだが、ここでも改めて触れずにはいられない。それは王貞治選手に対する国民栄誉賞の副賞として贈呈されたワシ(オオカンムリワシ)の剥製のことだ。
国民栄誉賞の副賞は百万円相当の記念品が慣例と言われる。国民栄誉賞の副賞として使われたことで、猛禽類の剥製に高価な価格がつくこと、また、贈答品としてのニーズがあることが、結果として喧伝されることとなったのは否めないだろう。