記事のポイント
- 京都市の寺院で、座禅を体験する若者やビジネスパーソンが増えている
- 背景には、不確実性が高まる中、内省へのニーズが高まっていることがある
- 「社会構造に巻き取られず、自分の軸を持ちたいと考える若者が多い」と禅僧
臨済宗建仁寺派「両足院」(京都市)では、座禅を体験する若者やビジネスパーソンが増えている。増加の背景には、不確実性が高まる中、内省へのニーズが高まっていることがある。同院の伊藤東凌・副住職は、「社会構造に巻き取られず、自分の軸を持ちたいと考える若者が多くなっている」と語る。(オルタナ編集部=松田 大輔)

「以前に比べて、20~30代で座禅に取り組む人は顕著に増えている」
こう話すのは、臨済宗建仁寺派「両足院」の伊藤東凌・副住職だ。早朝8時30分に始まる座禅体験では、祇園に近い境内に50人ほどが集まる。そのうち、過半数を20~30代が占めることも多いという。
伊藤副住職は、若者が増えている理由は複数あると説明する。インターネット上での申し込み方法をわかりやすくしたことをはじめ、境内で開いたアートの展覧会をきっかけに座禅に興味を持ってもらえたこと、人気ユーチューバーに紹介されたことなどだ。
社会の変化も、座禅する若者が増えた要因だとした。伊藤副住職は、「『内省』を重視する20代が増えた印象だ」と話す。内省とは、自分の考えや行動を省みるという意味だ。
「不確実性が高まる中、座禅を通して自らを省みて、『自分の軸』を持ちたいと考える若者は多い。社会の動きに身をゆだねて、社会構造に巻き取られてはいけないという気持ちが強いのだろう。」(伊藤副住職)
座禅に勤しむビジネスパーソンも増えているという。スマートフォンの普及によって、ビジネスパーソンは昨今、仕事と常時接続されている状態だ。オン・オフの切り替えが難しくなるなか、座禅に集中することで外からの刺激を一時的になくすことができる。伊藤副住職は、「現代人は脱力が下手な人も多い。座禅は、五感を豊かにするとともに、リラックスする技術でもある」と語る。
とはいえ、忙しくて座禅の時間がとれない人も多い。そうしたビジネスパーソンに対して、伊藤副住職は、「日常の動作を丁寧に、今していることを自覚しながら動くだけでも内省になる」と話す。
「例えば、お茶を入れる。掃除をする。料理をする。そうしたひとつひとつの動作でも、自分の心で念じるように目の前の行為に集中できれば、瞑想と同じような効果がある」(伊藤副住職)
両足院での座禅体験は、座禅の説明や法話を含んで90分ほど。お茶を楽しんだり、庭園を散策したりするプログラムも用意している。