熊野古道の道普請、今こそ企業の力で

■次世代につなぐ責任がある

―─私たちも先ほど熊野本宮大社(田辺市本宮町)近くの熊野古道を訪れ、JR西日本和歌山支社の社員250人の皆さんと道普請を手伝いました。

自分たちの手で運ぶという、昔ながらの方法で土を運ぶ
自分たちの手で運ぶという、昔ながらの方法で土を運ぶ

山西:一般人が世界遺産の保全活動をできるところは、日本ではここしかありません。しかも簡単です。

特に東日本大震災以降、CSR(企業の社会的責任)活動の一環で来ていただく例が増えてきました。2013年度、14年度(1月末現在)とも27企業に道普請のボランティアで協力をいただき、ともに1300人弱の方にご参加いただきました。

百瀬:企業のCSRとして何が大切か、熊野古道を訪れて思ったのは、「私たちは先祖から自然環境や文化を引き継いで、それを次の世代に伝えなければいけない」ということです。

現代社会は、住宅が自然の奥にまで入り、道路ができ、文化よりも便利さやスピードを追求し過ぎていました。それを変えることは難しいですが、歴史や信仰なども含めて、今まで大事にしてきたものを後世に伝えていくことはできます。

企業ぐるみで道普請に参加し、「自分たちがこの道を守れた」「次の世代に渡すことができた」と実感できると、また子どもや孫たちを連れてきたいと思えます。

―─ボランティア活動で誰かのために働くと、その人自身が人間として成長したり、モチベーションが上がったりする例を聞きます。

百瀬:誰でも、誰かに喜んでもらうのはうれしいことです。実は企業人も仕事ではそんなに「ありがとう」と言われません。家族同士でもそうです。

ところが、世界遺産の保全活動は、皆で土嚢(どのう)を担いで土を運ぶ、それが道になり、そこを多くの人が通っていく。参加者全員にとって大きな喜びになります。

山西:深い話ですね。他人に喜んでもらうことが自分の喜びなのですね。

参詣道は総延長で300km以上になります。道普請のために3~4時間は歩かなければいけない箇所もあります。重機を入れることもできない。昔なかった舗装素材を使ってもいけないのです。だから「人」だけが頼りなのです。

■CSRの社内浸透にも

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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