その時に、BOP層には支払能力がないからと決めつけないで、下痢防止に役立つとか、何か別のメリットを組み入れてパッケージで事業化して売る工夫が必要。値段が高くても購入してもらえるよう、行動の様式を変えるくらいの「仕掛け」がほしい。
今までにない栄養添加食品を販売するのとは違って、水は質が悪くても身の回りにある商材なので、事業化のハードルはその分高いことを理解する必要がある。どうしても自社製品の強みに頼りがちな企業が多いが、現地のパートナーと組んで、現地の慣習・文化を理解した上で、製品の受け手との意識ギャップを埋める工夫をすることをJICAは推奨している。
原田 そういうことを事前に日本企業に周知徹底してもらうことが有用だと思う。アジアはともかくアフリカともなると、現地の情報が日本企業には届いていない。
馬場 ご指摘の通り。日本の企業の方々に、もっとBOPビジネスに関心を持ってもらえるよう、JICAからの発信を工夫していきたいと考えている。
具体的には、これまで採択した調査を、製品・サービス、現地でのアプローチ法等に基づき類型化し、パターン毎に得られる教訓を整理した上でホームページに載せることを企画している。今後応募される企業は、それを参考にすることで、よりよい提案に繋げて頂けるのではないか。
例えば、これまでの教訓から、「現地のローカルパートナーが見つからない」というのは、失敗する一つのパターンであり、だからこそ、パートナー発掘は早急に進めておくべき事項として強調したい。
原田 確かに現地パートナーがいれば心強い。専門家としてケニアの大学で教えていた人が一般社団法人を立ち上げ、かつての教え子が経営する現地企業と組んでプロジェクトに挑戦しているケースを知っている。現地のコミュニティに入り込んでいた。複数の企業・事業が連携することで、事業化を進めているケースは。
馬場 連携にも色々なパターンがある。ウガンダでアルコール消毒剤による感染症予防ビジネスを計画しているサラヤは、JICAの青年海外協力隊員が活動する病院でビジネスを考えた。
ガーナで離乳期栄養強化食品を販売する味の素も、JICAが進める母子保健の技術協力との連携を視野に入れている。

現地に足がかりがない企業にとって、現地企業だけではなく、例えばJICA事業と連携することで、お互いWin―Winでメリットを享受でき、企業にとっては事業化の確度を高めることにも繋がる。