エネルギー政策議論で専門家「国民に問う形で示す時」

2030年に向けた国のエネルギー需給見通しの検討で、経済産業省は火力や原子力などで構成される「ベースロード電源」の割合を、現状の4割から増やすべきとの考えを示す。自民党は今月、ベースロード電源を6割程度とする提言を安倍首相に提出。一方、気候変動問題の専門家からは「原発比率は保守的に求めよ」との意見が上がっている。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

■「原発2割」は大量新設が前提

原発と化石燃料の依存を減らすには省エネと自然エネの拡大が不可欠だ
原発と化石燃料の依存を減らすには省エネと自然エネの拡大が不可欠だ

国会議員でつくる「原発ゼロの会」ほかは16日、都内で「国会エネルギー調査会(準備会)」を開き、気候変動政策とエネルギー構成比をテーマに議論。名古屋大学の高村ゆかり教授は、年末に控えるCOP21(気候変動枠組み条約第21回会合)で締約国合意が達成されなければ、2030年までに気温上昇を2度以内に収められないという危機感が各国間で共有されていると指摘。

また、COP21での議論の前提となる各国の排出削減目標を示す「約束草案」の提出が遅れる日本について「野心的な約束草案は日本のエネルギー政策上意味がある」と述べ、明確な目標を掲げる必要性を強調した。

さらに原発依存度についても高村氏は、稼働年数上限を40年とするルールや新安全基準、地元の同意を前提とすれば「数値はかなり保守的に求められるべき」との考えを示した。

仮にベースロード電源を6割とすると、火力や大規模水力は上積みが難しいため、原発比率を2割程度に引き上げる必要に迫られる。ところが、原発は稼働年数を40年とするルールを前提にすれば、大量に新規増設しない限り、30年時点で設備容量は現状から半減。早ければ49年にはゼロになる。

東電原発事故が続く中、大量増設は現実的に困難だ。エネルギー需給見通しの国の検討会で、「省エネ・再エネで生み出した余力を、原発と化石燃料の低減に回す」(第1回会合での坂根正弘委員長の発言)ことが念頭にある点を踏まえれば、省エネ、ならびに自然エネルギーの普及拡大を最優先に実施する必要がある。

また高村氏は、エネルギー需給見通しをめぐる今後の議論の進め方を「技術的な議論から、パブリックコメント等の形で国民の意見を問う段階」へと移行するべきだとも主張した。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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