アカミミガメといえば、日本へ大量に持ち込まれた「きっかけ」の一つを私たちの世代(アラカン)は知っている。それは、お菓子の景品として日本中に頒布された。コマーシャルや少年誌の広告で「アマゾンの緑ガメ」(実際は北米産)として紹介され、金魚鉢(?)の中を泳いでいた可愛い姿(のイメージ)が脳裏に残っている。
それが金魚鉢にはおさまらない大きさに育ち、飼いきれなくなって捨てられ、あるいは神社の池などに「放生」され、全国に分布を広げた。今にして思えば、生きているカメを販促景品として使うこと自体に違和感があるが、当時の私にそのような感覚はなく、一度ならず応募した。

もし、当選していたならば、私自身、飼いきれなくなったアカミミガメを、近所の川に放したであろうことは間違いない。あるいは、比較的水温の高そうな石和温泉街の川まで運んだだろうか。川辺に捨てておきながら何ら罪悪感なく、むしろ内心、昔話に出てくるような「カメの恩返し」を期待しつつ、カメの幸運を祈っている自分の姿が想像できる。
頒布されたカメは特定の亜種が多かったとも聞く。日本で繁殖しているアカミミガメの遺伝的系統を調べれば、その痕跡は残っているのだろう。あるいは、痕跡どころか、「アマゾンの緑ガメ」として持ち込まれた第一世代の少なからぬ個体が、今も生き延びて子孫を殖やし続けているかも知れない。
その一方で、ニホンイシガメは一昨年から付属書Ⅱに記載されている。もちろん、アカミミガメには何の罪も責任もないことであるが。
カルピス株式会社 人事・総務部 坂本 優
<バルディーズ研究会通信 158号から一部抜粋加筆>