■CSVではなく、“Shared Value”を使う意味
CSVが普及するきっかけとなったのは、2011年にマイケル・ポーター教授、マーク・クラマー氏がHarvard Business Review 誌に掲載した“Creating Shared Value”の論文です。
 
最近は、ポーターとクラマーの創設したFSG では、CSVではなく、“Shared Value”という言葉を使い、シェアード・バリューを広げるために様々な活動をしています。
 
シェアード・バリューという言葉を使うようになったのは、FSGの中で議論した結果、CSVだとCSRと似た概念と捉えられてしまうため、経営戦略として広げていくには、違う言葉が良いだろうという結論に至ったようです。
 
最近、多くの経営者や経営学者から、世界の社会問題に対し、企業はその力をもって解決することができ(解決すべきで)、そうすることが企業と社会の持続的発展を可能とするというCSV/シェアード・バリューと同じ考え方が、示されています。
 
一方で、CSVは、まだまだCSRと同じような概念と捉えられています。例えば、ポーター教授と同じハーバード・ビジネス・スクールのジョセフ・バウアー教授は、社会問題の解決がビジネス機会であるとしつつ、CSVについては、以下のように述べています。

「(社会問題がビジネス機会であるという私の主張は)CSVとは違いますね。我々は共通価値が主眼ではなく、あくまで企業が事業存続するための「利益の創出」が重要であると考えています。

(中略)我々は社会問題の解決を義務ではなく、ビジネス・チャンスと見ています。それも非常に大きなビジネス・チャンスと捉えています。企業は利益を生み出すのが目的ですから、政府ができないことを、ビジネスとして社会問題の解決に乗り出さなければいけません。」
 
ポーター教授らは、経営のメインストリームにこうした意見が多いことに対して「CSVは、社会問題をビジネス・チャンスと見ている」として、CSVの企業価値、経済価値の側面を強調しています。企業価値、経済価値の側面を強調しないと、CSVは、経営のメインストリームには、広がらないと考えているからでしょう。“Shared Value”という言葉には、そんな思いが込められています。

【みずかみ・たけひこ】東京工業大学・大学院、ハーバード大学ケネディースクール卒業。旧運輸省航空局で、日米航空交渉、航空規制緩和などを担当した後、アーサー・D・リトルを経てクレアンに参画。CSR/ サステナビリティのコンサルティングを主業務とする。ブログ「CSV/ シェアード・バリュー経営論」共著『CSV 経営』(NTT 出版)

(この記事は、株式会社オルタナが2014年9月5日に発行した「CSRmonthly 第24号」から転載しました)

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