オルタナ80号「農業トピックス」52

ドイツの大手スーパ ーLidl(リドル)は、ビーガンなどの植物性タンパク質由来製品の割合を2030年までに20%に引き上げる目標を掲げている。環境NGOのWWF(世界自然保護基金)が開発した方法論「Achieving a Planet-based-Diet」に基づき、欧州を中心に店舗を展開する31ヵ国で実施する。
取り組みの根底にある考え方が「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」だ。これは、16ヵ国・37人の食や健康、農業、環境の専門家による研究グループ「イート・ランセット委員会」が、持続可能なフードシステムのガイドラインとして2019年に発表した。
「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」はパリ協定1.5℃目標の達成と、2050年に100億人と予想される人々の健康的な食の両立を目指す。そのために、1日に必要なエネルギー量の一つの目安とされる2500キロカロリーを摂取する際に、どの食品グループをどのぐらい食べるかという明確な基準を設けた。
具体的には約半分を野菜と果物で、残りの大半を植物性タンパク質や全粒穀物主体の食事で賄うよう奨励している。
一方で、乳製品や動物性タンパク質の摂取は極力に抑える。牛肉1キログラムの生産には、1万5000〜2万リットルの水が必要だ。国連食糧農業機関(FAO)の試算では、畜産由来の温室効果ガス排出量は世界全体の排出量の14.5%を占める。動物性を抑えるのは健康面だけでなく、気候変動などの課題を緩和する狙いもある。
食料の生産方法についても重視しており、環境再生型農業の普及を通して生物多様性や水資源を保護し、窒素やリンによる汚染を減らすよう提言している。