公正な情報流通の促進、国民主権の実現に貢献する個人や団体を表彰する「日隅一雄・情報流通促進基金賞」(同基金主催)の授賞式が17日、都内で行われた。3年目の今年は大賞に『原発と大津波 警告を葬った人々』(岩波新書)の著者であるジャーナリストの添田孝史氏が選ばれた。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■添田氏「津波は想定外ではなかった」
同賞は2012年に亡くなった弁護士の日隅一雄氏にちなんで設立。産経新聞記者から弁護士に転身した日隅氏は生前、表現の自由と情報公開に関する訴訟を手がけた。また、東電原発事故以降は末期がんと患いながら東電や政府の記者会見場に延べ100回以上も通い詰め、情報の誤りや隠蔽を追及し続けた。
添田氏は東日本大震災の2ヶ月後に朝日新聞社を退社。その後、国会事故調の協力調査員を務めるかたわら、開示請求で得られた政府資料を基に取材を重ねた。
『原発と大津波』では、地道な資料収集を通じて政府や東電関係者が福島沖の地震津波を予測していた事実を解明。また、収集した政府資料をウェブ上で公開し、市民にもアクセス可能なものとしている点が授賞理由として評価された。
授賞式で添田氏は「東電の清水正孝社長(当時)が『津波は想定外だった』と言ったことで『こいつだけは許せない』とスイッチが入った」と取材の動機を振り返った。さらに添田氏は「原発事故をめぐっては今も不明な点が多く、福島の事故の隠された部分を明らかにして行きたい。公文書の保存期間は5年で切れてしまうが、今後も取材を重ねる」と決意を語った。
このほか、子どもを原発事故の放射能から守ろうと動き出した女性たちが刊行する季刊誌「ママレボ」が奨励賞。また特別賞には「『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」、および女性への戦時性暴力をめぐる問題などで尽力した故・東海林路得子(しょうじ・るつこ)さんが選ばれた。