使用済み核燃料めぐり議論「全量再処理からの脱却を」

政府は原発再稼働に向けた手続きを進めるが、その一方で堅持する核燃料サイクルの先行きは不透明だ。今後の使用済み核燃料の取り扱いをめぐり、前原子力委員会委員長代理の鈴木達治郎氏は「全量再処理に固執せず、直接処分も選択肢に含めることが必要」と唱える。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

■核燃料サイクルで廃棄物は減らない?

六ヶ所再処理工場(Wikimedia Commons.)
六ヶ所再処理工場(Wikimedia Commons.)

鈴木氏は現在、長崎大学核兵器廃絶研究センター長を務める。鈴木氏は18日、衆院議院会館で開かれた「国会エネルギー調査会(準備会)」(「原発ゼロの会」主催)で講演した。

この中で、原子力委員会の核燃料サイクルに関する小委員会が2012年3月に示した見解を紹介。今後20~30年では、使用済みウラン燃料を再処理して「プルサーマル発電」のためのMOX燃料を製造する「MOXリサイクル」、および使用済みウラン燃料をそのまま最終処分する直接処分(ワンススルー)のみが実用化できる技術選択肢だという。

また同見解では、高速増殖炉サイクルについて「長期的な選択肢としては、資源効率や廃棄物面で最も優れた特徴を有する」とする。しかし核不拡散の点では直接処分が最もリスクが低く、MOXリサイクル、高速増殖炉サイクルの順でリスクが高まるため、より高度な保障措置が必要だ、とも指摘している。

さらに鈴木氏は、経産省が核燃料サイクルの利点として「廃棄物の減容・無害化」を強調していることに対しても「実はそうではない」と話した。

その理由として鈴木氏は「使用済みMOX燃料の再処理では、発電電力量当たりのガラス固化体の発生量が使用済みウラン燃料再処理の2倍近いとの試算がある。また、使用済みMOX燃料の処理方策は六ヶ所再処理工場の運転実績を踏まえて検討する課題、とされているが、経産省の説明資料はこれらの点が抜けていることが多い」と説明した。

鈴木氏はこのほか、直接処分とMOXリサイクルでは廃棄物量に大差はないこと、再処理はあくまでウランやプルトニウムを取り出すのが目的である点などにも触れた。

■「技術評価の第三者機関が必要」

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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