完全出社なら「仕事を辞めたい」と回答、若手社員の半数に

記事のポイント


  1. 完全出社なら、退職を考える若手社員が半数に上ることが明らかに
  2. 英国の調査会社などが日本を含む世界8カ国の若者5千人を対象に調べた
  3. 完全出社を嫌がる若手社員は多いが、対面での交流には前向きな一面も

企業の製品やサービスの品質を認証する英国規格協会(BSI)などは4月30日、日本を含む世界8カ国の若手社員を対象に働き方に関する調査レポートを公表した。レポートの結果、会社が完全出社を求めた場合、退職を考える若手社員が半数に上ることが明らかになった。リモートワークが本格化するコロナ禍以前の働き方を知らない若手社員に会社はどう向き合うべきか。(オルタナ輪番編集長=池田 真隆)

今回の調査は、BSIと英国のシンクタンクであるレス・プブリカ社が共同で実施した。2019年のパンデミック以降に就職した世界の若者4710人を対象にアンケートを取った。対象国は、日本、オーストラリア、中国、フランス、ドイツ、インド、英国、米国の8カ国だ。

リモートワークが本格化したコロナ禍以降に企業に就職した若者の就労観は、コロナ禍以前に就職したビジネスパーソンと比べて大きく異なる。コロナ禍以降に社会に進出した若者の多くはリモートワークと出社を組み合わせた「ハイブリッド形式」で働いてきた。

コロナ禍以降に新社会人となった人口は、世界で約2億人に上る。こうした「ハイブリッド世代」の就労観を理解することは、若手社員のエンゲージメントを強化し、生産性にもつながる。

「全員出社の日」6割が設けるべき

調査では、リモートワークもしくはハイブリッド形式で働く若手社員の半数(49%)が、会社から完全出社を求められた場合、「仕事を辞めたいと思う」と回答した。完全出社を嫌う一方で、対面でのコミュニケーションの重要性を認識している側面もあった。

60%が、ハイブリッド形式であっても、直接会話できるように「全員出社の日」を設けるべきだと回答した。対面でのコミュニケーションはウェルビーイングやメンタルヘルスの向上にも寄与する。

職場でメンターを見つけたと回答した割合は半数以上(55%)で、48%が少なくとも月に1回は同僚と交流の機会を持つと答えた。対面での職場経験が人とのつながりや自己成長の機会を促し、メンタルヘルスにポジティブな影響をもたらしていることが分かった。

工場での勤務など職種によっては完全出社が必要な仕事もある。その場合は、特定の時間帯に出勤を義務付けるコアタイムの導入や、週の所定労働時間は変えずに「週休3日」にするなど柔軟な勤務形態を提供すべきと回答した割合が71%に及んだ。

待遇よりもワークライフバランスを優先に

今回の調査を行ったBSIの日本法人であるBSIグループジャパン(横浜市)の漆原将樹社長は、「パンデミック期にキャリアをスタートしたハイブリッド世代は、これまでとは異なる価値観を持つ」と話す。働き方だけでなく、働くモチベーションも金銭的なインセンティブよりもワークライフバランスの充実を優先する傾向にあるという。

少子高齢化が進む日本では、若年層の活躍を支える環境づくりが企業の持続的な成長のカギとなる。漆原社長は、「自社の価値観や信頼に基づく企業文化の共有が、最も重要視されるようにもなった。組織には個人の多様なニーズに応えることと合わせて、透明性と健全性を備えた職場環境づくりが求められている」と話した。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

執筆記事一覧

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。