女性が輝く社会をどう創るか?

■女性の社会起業家支援で製品販売も

原田 男性から見ると、なんか羨ましくなるような充実した内容ですね。

薗田 それだけではないのです。今私が注目しているのは、西友の女性起業家支援です。具体的には女性が活躍する企業からの商品を公募するというチャレンジングな取り組みです。審査で選ばれた商品は西友の店舗またはオンラインショッピングサイト「SEIYUドットコム」で販売されます。

これまでに、エド・インターの「よちよちベビーウォーク」、EVUQの「ベビー・キャリア・カバーCURUMI」、ヨコロンの「マザーズバッグ」といった商品が選ばれ、販路を拡大しています。

マザーハウスとキャンサー・ソリューションズが共同で開発した乳がん経験者の ための「クッション入りショルダーストラップ」
マザーハウスとキャンサー・ソリューションズが共同で開発した乳がん経験者の
ための「クッション入りショルダーストラップ」

原田 アイデアにあふれた女性起業家にとってはありがたい仕組みですね。女性の視点と生活実感が起業家精神と結び付くことで可能性が広がりますね。CSVも女性の視点から見ると、こんなにも新鮮なのですね。それでは最後に、こうした動きの今後の方向性について聞きたいのですが。

薗田 女性の社会課題という意味では、今後、ストレスの問題が大きいと思います。まじめな人ほど大変なことになってしまう可能性があるので企業など周囲も対応が必要だと思います。また、女性というと子育てばかりに焦点が当たっていますが、それ以外にも課題はあるわけで、女性を支える仕組みがほしいところです。西友の例もそうですが、起業やNPOを立ち上げる際の資金的な支援とか、コンシェルジュのような相談窓口があるといいですね。イベントに集まっていっしょに盛り上がる場があるだけでもいいと思います。

最後に、ミレニアム開発目標(MDGs)が今年で終わり、次に持続可能な開発目標(SDGs)がスタートします。開発アジェンダを幅広く網羅しており、女性の問題も含まれています。これにどうかかわっていくべきか企業の方々とも話をしているところです。CSVの視点から未来志向で取り込んでほしいものです。

原田 ありがとうございました。

プロフィール:薗田綾子(そのだ・あやこ)
1988年、「社会の中で本当に役に立つ仕事がしたい」という子どものころからの思いを実現するため、女性を中心としたマーケティング会社としてクレアンを創業。環境関連の雑誌、書籍発行、ソフト開発を手がける。その後、CSRレポート制作支援、CSR経営推進コンサルティングにも乗り出し、受賞歴多数。NPO法人サステナビリティ日本フォーラム事務局長、NPO法人社会的責任投資フォーラム理事、日経ソーシャルイニシアチブ大賞審査委員。

<インタビューを終えて>
CSV戦略を女性という視点で切り取るというのは極めて新鮮で、マイケル・ポーター教授も驚くのではないか。女性の活躍が期待される日本だが、依然、男性中心社会の名残が各所に散見される。古い体質を変えるという発想ではなく、新しいモデルを提示しているところが薗田流なのだろう。

高校生の時、既に「このままの社会ではダメだ」と考えていたという薗田さんは、そういう意味では働く女性、活躍する女性のパイオニア的存在でもある。肩肘張ってCSRやCSVを説くのではなく、ソフトに具体的にそれを実践していく、この人の存在こそ、「女性の時代」にふさわしいと感じる(原田)。

harada_katsuhiro

原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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