そのような日本人の努力や、研究、検討の意義を認めない訳では決してないが、獲れなくなったら完全養殖、獲りつくしたら別の種類という発想のままでは、私たちは、ともに生物多様性の輪の一環をなすウナギに向き合うことなく、食材としての鰻しか見てないことになるだろう。
万葉の昔から日本人の食卓を豊かにしてくれてきたウナギ。私たちはウナギに感謝しながら、おいしくいただいてきた。それは各地の鰻供養塔や鰻塚からも、うかがい知ることができる。しかし、その私たちの旺盛な食欲が彼らの生存を脅かしているのもほぼ間違いない事実だ。
その私たちだからこそ、彼らの生態を解明して絶滅の危機から救い、日本の、そして地球の豊かな自然の中で共存していきたい。

昨年、鶏肉とナスを使った「鰻重」風の献立が話題となったが、今年の土用の丑(7月24日/一の丑)には、近畿大学が、大阪と東京のアンテナショップで、「うなぎ味のナマズ」を使ったスペシャルランチメニューを試験販売するという。
研究者の方々の努力に、個人や企業の工夫も重ねつつ、そのうえで、私も大好きな鰻の蒲焼など、日本の食文化を継承していければと切に願う。
今週金曜日、7月24日は土用丑。会社の食堂でも「鰻丼」がお奨めメニューだ。この日に備え、担当の方が、皆のおいしい笑顔のために準備をしてくれている。「食うか」、選択対象から「削るか」、悩ましいところだ。
しかし、私たちにとって、現代の「食うか削るか」は、水戸藩士のような命懸けの選択ではない。片や、ニホンウナギにとっては、種の存続がかかっている。完売を願いつつ、私自身は、後日を期して今年も唾をのみ込むだけにしよう。