子どもの頃、夏休みの昆虫採集で、関西方面に親戚がある子は、時に、翅がミンミンゼミのように透明で、胴体が黒くて大きいクマゼミを採集していた。二学期になって誇らしげに学校に持ち込まれた標本を見せられると、無性にうらやましかったものだ。

当時、暮らしていた山梨の甲府盆地では、感覚的には夏のセミは圧倒的にアブラゼミだ。ミンミンゼミでも、声はよく聞くものの数は比較的少ないうえに、子どもにとっては捕まえにくい高いところにしか止まらない(と感じていた)、手に入れるのが難しい貴重なセミだった。ましてやクマゼミである。
そのクマゼミが都内でも普通のセミ化しつつある。豊かな森によって守られ、野草などでは在来種が比較的残っている明治神宮においても、クマゼミは決して珍しくない。